【記事】ラッコ501号を救え!(3)| Saving Otter 501-part3

ラッコの保護に取り組む人々の情熱を描いた"Saving Otter 501"のパート3です。
いよいよ、501号が養母のトゥーラと対面。ここからは、ラッコに必要なことはラッコから学ばせることになります。

パート1 | パート2

 

パート3は、18:40から29:00くらいのところまでの書き起こしです。

絶滅危惧種となったラッコ

501号はまだ新しい母親はまだ引き合わせられていませんが、自然で生きるために上達させなければならないいくつかのスキルについて体験しています。

これがその一つです。

とても可愛らしく見えますが、非常に重要なことなのです。

 

ハザン「毛づくろいは、食事と同じくらい大切です。自分で毛づくろいできないラッコに適切な毛づくろいをしてあげなければ、すぐに低体温症になり、最終的には死んでしまうのです。」

 

ラッコは脂肪層がないため、体温を保持し身体が濡れないようにする唯一の手段が毛皮なのです。しかし、地球上の生き物で一番密度の濃いラッコ毛皮は、きれいにしているときしかその機能を発揮しません。そのため、ラッコはくるくる回ったり、なめたり、こすったりと非常に念入りに毛づくろいします。そのすることで、外側の毛に油がついて滑らかになり、水をはじくようになります。また毛皮の中に空気を封じ込めて、体温を保持し、水に浮きやすくし、また防水機能を得るのです。

 

しかし、自分を守るはずの毛皮が、ラッコ自身を絶滅寸前まで追い込んでしまったことがありました。

 

数百年前、日本からアラスカ半島、北アメリカの西海岸を経てメキシコのバハ・カリフォルニアにかけてラッコが生息していた時代がありました。

しかし、1700年代半ば、ロシア人たちが毛皮目的でラッコ猟をはじめ、「大狩猟時代」と呼ばれる時代の引き金となりました。

1900年代の初めごろまでには、カリフォルニアラッコは全て殺され、毛皮を剥がれてしまったと思われていました。

ところが、1938年、ビクスビークリークのビッグサー近くで、生き残りのラッコの小さな群れが発見されました。たった一つの、約50頭からなる群れ---それが、カリフォルニアの最後のラッコの生き残りだったのです。今いるカリフォルニアのラッコたちは、全てその生き残った50頭の子孫たちです。現在は約2,800頭しかいません。そのラッコたちはみな、あまり生息地を広げることなく小さな地域に住んでいます。その理由は分かっていません。しかし、それは大きな問題でもあります。その地域で原油流出などの大きな事故があった場合、全滅してしまう恐れがあるからです。そのため、ラッコたちが絶滅危惧種保護法で、絶滅危惧の指定を受けているのです。モントレー湾水族館がラッコを保護するために途方もない時間とエネルギーを費やしている理由でもあります。

1938年、ビックサーで発見された生き残りのラッコの群れ (Photo © William L. Morgan/California Views Photo Archives)
1938年、ビックサーで発見された生き残りのラッコの群れ (Photo © William L. Morgan/California Views Photo Archives)

「母」と「子」の絆

501号は、6キロ半ほどになりました。集中ケアセンターから卒業です。

58日間隔離されてきましたが、ついに新しい母親ができることになりました。しかし、どうなるかまだ分かりません。501号が自然に還るためには、母親と絆が結ばれなければなりません。

引き合わせる前準備として、メイヤーは将来の養育係を水槽に入れました。

トゥーラというラッコです。ここで初めて養母になったラッコです。501号は、トゥーラの11番目の子どもになります。

 

ハザン「今日が、501号をトゥーラに紹介する日となりました。501号は少し大きい水槽に移る準備ができています。人に慣れて甘えるようになってきました。だから、今なんです。私たちも準備できていますし、501号もそうです。願わくば、トゥーラも心の準備ができていたらいいんですが。」

 

501号は準備ができているかもしれませんが、確信できてはいないようです。いずれにしても、501号は見たこともない生き物に怯えていました。

1日目のほとんどの時間、501号は作り物のコンブに隠れていただけでした。トゥーラがよそよそしさを演じているだけなのか、興味がないだけなのか分かりません。

 

メイヤー「トゥーラは、もともと子どもをしぶしぶ受け入れるタイプです。すぐに引き受けるタイプではありません。今の時点では、上手くいくのが当然だとは思っていません。」

 

誰も、すぐに母と子の絆が結ばれるとは期待していません。しかし、1日目が終わるまで何も起きませんでした。501号はまだ赤ん坊なので、自分で餌を獲ることができません。そこで、メイヤーは501号を捕まえて、もう一晩集中ケアセンターで世話をすることにしました。

 

メイヤー「2匹はお互いに距離をおいたままでしたが、逆に悪いこともないまま、最初のセッションを終えることになりました。もう一度、明日挑戦します。」

 

しかし、翌朝、501号はやはりこの水槽にいるのは居心地が悪そうでした。

一方、トゥーラは少し興味を持ち始めたようです。

501号は、そうでもないようです。

 

3日目になると、トゥーラは駆け引きを始めようとしていました。

 

メイヤー「まだ、親子らしい様子を直接見せているわけではありませんが、少しずつ2匹の距離が縮まっていて、不快感がなくなってきているようです。正しい方向に向かっているのだという感じがします。」

 

そして、ついに5日目。

このようになりました。

(C)PBS
(C)PBS

メイヤー「トゥーラが501号を受け入れ、501号もトゥーラを受け入れたということは、このプロセスの中で大きな一歩となります。これは、今から生後6か月になるまでの急速に発達する段階に入ったと考えられます。その段階では、501号は完全に野生に返るために学ばなければなりません。

 

62日目になりました。

トレーニングが本格的になってきました。トゥーラの協力を得て、水族館のスタッフは501号にまるのままの貝や、殻のついた他の餌を与えます。

 

ハザン「トゥーラは代理母として、非常に気配りができるラッコです。ほとんどの時間、ねだる子どものために餌を獲って与えています。トゥーラが子どもに対して適切な世話をしているのを見ると、非常に嬉しく思います。」

 

1週間たたないうちに、ハードルをあげます。野生のラッコの大好物である、生きたカニを501号に与えるのです。501がこの不思議な生き物に興味津々なのは明らかでした。

しばらくして、トゥーラの「カニのレッスン1」が始まります。

カニが怒ると、そのはさみは幼いラッコにとって凶器となります。ありがたいことに、トゥーラがそばにいてくれます。しかし、自然に帰れば、鼻をはさまれても誰も取ってはくれません。しかも、だれも自分が浮いているところに餌を投げてくれるわけでもありません。ラッコの餌はほとんどは海の底にいます。しかし、501号はまだ上手く潜ることができません。

 

10日目までには、501号は自分で貝を割る方法を学びました。しかし、野生では10メートル近くも潜らなければなりません。水に浮きやすい赤ちゃんの毛はほとんど生え変わってなくなりましたが、いまだにほとんど水面でじたばたしているだけです。

水の底に触れるようになってきました。しかし、なかなか潜ったままでいることができません。

自然の中で生きるには、数週間で潜水をマスターしなければなりません。

ラッコは、非常に大量の餌を必要としますが、餌を獲るには潜るしかないのです。

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