【記事】ラッコの別の顔 | The Other Side of Otters

本日は2011年3月の古い記事ですが、Discovery Newsから"The Other Side of Otters"をご紹介します。やや衝撃的な内容かもしれません。

キュートで、ふわふわで、愛らしいラッコが、カリフォルニアで若いアザラシを力づくで強姦し、死に至らしめているのが発見されました。

 

最新のAquatic Mammals(水棲哺乳類)誌によると、カリフォルニア州漁業狩猟局のヘザー・ハリスとその共同研究者たちは2000年から2002年の間にモントレー湾でラッコのこのような行動が19件確認されており、その結果少なくとも15頭のアザラシが死んだと報告しています。

 

ハリスとその共同研究者たちは、一つの事件について鮮明に述べています。

 

「離乳したばかりのハーバーシール(アザラシの一種)が海岸で休んでいたのですが、タグのないラッコ(保護団体によって足ヒレに管理用のタグが付けられていないラッコ)が近づいていきました。そして、そのアザラシを歯で咥え、前足で掴んで、鼻に噛みつき、ひっくり返しました。ラッコにぶら下がられたまま、アザラシは水の中へ逃げようとしました。水の中に入ると、そのラッコはアザラシの頭を両手で持ち、何度も鼻に噛みつきました。そのため、アザラシには深い裂傷ができてしまいました。ラッコとアザラシの子どもは、水の中で15分ほど乱暴にぐるぐる回っていましたが、その間アザラシはラッコから逃げようともがいていました。ラッコは最終的に、小柄なアザラシの背後に回り、頭を掴んで、よく交尾の際に見られるような典型的な体位で水中で抱きかかえました。ラッコが腰を押し付けると、ペニスが飛び出し、挿入しようとするのが観察されました。2頭が遭遇してから105分後、ラッコはアザラシを解放してやりましたが、すでにアザラシは死んでしまっており、ラッコはグルーミングを始めました。」


彼らは、このようにも述べています。ラッコは、アザラシが死んでしまったあとも、実際、7日後くらいまでも、そのアザラシを守りつつ交尾しようとしました。

 

ハリスとその共同執筆者たちは、このような行動は奇怪に見えてしまうかもしれませんが、雌の後ろから近づき、前足で胴体を抱きかかえ、歯で鼻もしくは顔の側面に噛みつくという普通のラッコの交尾の仕方と似ていないわけではないとも述べています。

 

そうであるとしたら、これはいったいどういうことなのでしょうか。雌と交尾して、その雌を殺してしまうのは全く理にかなっていませんし、他の種の動物と、それが生きているにしろ死んでいるにしろ、交尾するということはさらに無意味です。ハリスと共同執筆者たちは更なる説明をしています。


ラッコはそもそも一夫多妻制で、より強い雄がより多くの雌を伴った縄張りを持ち、他の性的に成熟した雄のラッコたちを追い出そうとします。こうした、追い出されたラッコたちが、いわゆる「雄ラッコエリア」に集まり、雌との接触を断たれてしまいます。モントレー湾のラッコの個体数における変化により、その状況は悪化してきていると思われます。理由は依然としてはっきりしていませんが、ラッコの死亡率は上昇しており、雌ラッコに不釣合いな形で影響を及ぼしています。結果的に、性的に成熟したより多くの雄たちは、交尾の機会を無くしているため、いったん交尾の機会を得ると、その際により攻撃的になってしまう可能性があると考えられます。そうして、交尾の機会を拒否されたままの雄ラッコたちが、その鬱憤を不幸なアザラシの子どもたちに向けてしまうのです。そうした異種間の交尾は、ラッコほどの劇的な結末にはなりませんが、他の海洋哺乳類の間でも起こっていることが知られています。

 

ハリスと共同執筆者によって記録された出来事は、モントレー湾で起こりました。しかし、ハリスはディスカバリーニュースに対してこう述べています。「少なくとも3頭の別々の雄ラッコに異種間の交尾が記録されており、また類似の行動が野生の他の動物たちにおいても記録されているとするなら、こうした行動はラッコの生息地域の他の場所でも起こっていることは確かでしょう」

アザラシの子どもの死体を抱くラッコ (C) Stori Oates
アザラシの子どもの死体を抱くラッコ (C) Stori Oates

らっこちゃんねるより

実は、この記事を掲載しようかどうかずっと迷っていました。誰しも自分が好きなものの「ダークサイド」を見たくはないとは思うのですが、好きだからこそ目を向けなければならない部分もある、ということでこの記事を掲載することを決めました。らっこちゃんねるは、もちろんラッコが好きで始めたものですが、事実でも都合の悪い記事は載せないという態度では、本当にラッコに向き合っているとは言えないと思いました。

 

実は、私もモスランディングでラッコがアザラシの子どもを抱きかかえているのを目撃したことがあります。

最初は何か大きなものを抱えているように見えましたが、何かはっきりわかりませんでした。望遠レンズで拡大してみると、どうやらアザラシのようなものが見えました。アザラシは身動き一つしておらず、死んでしまっているのがすぐに分かりました。そのラッコは、アザラシをまるで母親が子供を抱きかかえるように抱えていたので、最初、子どもを亡くした可哀想な母親ラッコがアザラシを自分の子どもだと思って抱いているのかと思いました。そのラッコは、移動する間もずっとそのアザラシを抱え、自分がグルーミングしている間はそばに置いておきます。当然ながら死んでしまっているアザラシは水の中に沈んでいくのですが、グルーミングを終えると水に潜り、そのアザラシを引き上げてまた抱きかかえて泳いでいきました。異様な光景でしたが、私にはむしろそのラッコがアザラシに愛着を持っているようにも見えました。
その様子を捉えた動画もありますが、Youtubeの他のラッコ動画のコメント欄を見ていると、そうした面ばかり理不尽に攻撃する人がいますので、しばらく公開するつもりはありません。

 

以前から、いくつかのウェブサイトやYoutubeのコメントでラッコがアザラシの子どもを虐待しているということは知っていましたが、実際に見てそうだとにわかに信じることができませんでした。よくよく考えると、そのモスランディングにいる群れはほとんど雄らしく、そうすると書かれていることに辻褄が合っているような気もします。

 

ハイブリッドの動物が存在することを考えれば、他の動物でも異類間での交尾は普通に存在すると思われます。ラッコの場合は交尾が激しすぎるためにこのような結果になってしまう。でも交尾が激しいのは、陸に上がらなくても交尾できるようにしたという、相当な理由がある訳です。ラッコの交尾は激しく、ラッコの雌でさえも噛みつかれた際の鼻の怪我がもとで感染症などにかかり死んでしまうことが少なくありません。アザラシには非常にお気の毒だとは思いますが、ラッコもわざとアザラシを殺したいと思って殺したわけではないでしょう。あるラッコの雌ではなく、アザラシが死んだ、というだけのことです。

 

猫だって食べない動物や虫をおもちゃにして殺したりすることもありますし、どんな動物にもそのような残酷な側面はありますが、ラッコは見た目や動作があまりにも愛くるしいため、ギャップが大きく、驚く人も多いのでしょう。あとは性的な面でのことであるということや、被害者であるアザラシがいわゆるカワイイ動物の一つであるということも、ある人々への嫌悪感を倍増させているのではという点も否めません。

 

動物たちはみな、本能に忠実です。野生のチンパンジーだったか、他の霊長類だったか忘れましたが、生まれたばかりの子どもを食べてしまうことがあるという記事をどこかで読んだことがあります。人間にとっては禁忌であっても、他の動物にはその動物の生き方がある。人間がこういう行動に対して嫌悪感を持ってしまうのは仕方がありませんが、人間の情緒や価値感を基準にして他の動物の行動を非難するのは間違っていると思います。理性が本能をコントロールできると信じている人や、生き方に倫理を持ち込む人間のほうが、他の動物とは違っているだけです。むしろそんなことを信じている人間のほうがよっぽどえげつないことをしていたりもします。短絡的に非難する前に、動物も人間自身も、全てが合理的・倫理的にできているわけではないということを、よく理解しておく必要があると思います。

 

追記

ここ数年内で発表された異種間の交尾に関する研究を紹介している記事をご紹介しておきます。(リンク先は英語です)

異種間の交尾は近い種(例えば犬とオオカミなど)の間で同じ種の動物と間違って行われることがあるそうです。上記の場合、サルやオットセイが自分と同じ種でない動物を性的欲求の対象にしているのですが、いずれもメスに接触機会のないオスが性的欲求を解消するために行っているのではないかと専門家は考えています。

元記事:

Discovery News
The Other Side of Otters

MAR 21, 2011 11:38 AM ET // BY KIERAN MULVANEY

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コメント: 13
  • #1

    mimi (火曜日, 13 10月 2015 11:42)

    最初はすごくショックでしたが、最後までちゃんと記事を読んでよかったと思いました。彼らよりも本能を抑制する能力があるのにレイプし殺したり、言うのもおぞましい事をしている人間に責める資格なんてありませんね。人の都合で増やされたり、殺されたり、金儲けの道具にされたり・・・動物たちに申し訳ない気持ちになります。

  • #2

    らっこちゃんねる | Sea Otter Channel (火曜日, 13 10月 2015 13:07)

    mimi様
    コメントありがとうございます。最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

    この記事にアクセスする方の多くは残念ながらtwitterなどでシェアされた興味本位の投稿からリンクをたどってくる方ですが、そういう方のほとんどはこのウェブサイトの他のもっと重要な記事には興味がないでしょう。
    掲載した意図を理解することなく、ただ「ラッコがアザラシをレイプして殺す」という事実の断片だけが出回ってしまうことが非常に残念です。

  • #3

    ななしのたびびと (火曜日, 13 10月 2015)

    子供を食べるので有名なのはハムスターでしたかな?
    母親が育児中に強いストレスに曝されると子供を殺して食べてしまう事があり、酷いときには子供が全滅します

  • #4

    らっこちゃんねる | Sea Otter Channel (火曜日, 13 10月 2015)

    ななしのたびびと様
    コメントありがとうございます。
    調べてみると同じ種内でのカニバリズムは多くの動物に見られるようですね。ハムスターの母親も、ストレスや厳しい環境下では手がかかる子どもを生かすのではなく、まず自分が生きることで種の存続をはかろうとするのかもしれません。
    ラッコの母親が子どもを食べたという報告は見たことがありませんが、ストレスにより子どもを捨ててしまうことは多いようです。(下記記事参照)
    【記事】ラッコの母親業は楽じゃない |Motherhood is no picnic for sea otter mums
    http://goo.gl/bouS9L

    カラパイアさんに興味深い記事がありましたので併せてご紹介します
    動物の子殺し。なぜ動物の親は自分の子を食べるのか?(フィンランド研究)
    http://karapaia.livedoor.biz/archives/52151815.html

  • #5

    うわ (木曜日, 18 8月 2016 09:38)

    ラッコえげつなっ

  • #6

    Fumiya (土曜日, 17 9月 2016 06:41)

    オットセイでもペンギンを襲う例があったね。なるほど、どちらもハーレムを形成する。

    こういった性的な行動と暴力的な行動が絡むと、私たち人間からは(特に先進国の)は理解できないばかりか、美しいと信じている自然に反していると思いたくなる。思い込みだね。

    本能の話もそうだけど、一般化したいのはわかるが、私たち生物は個性の塊である個体の集まりだということを忘れないでいて欲しい。
    それで、もっといい面も知って貰いたい。

  • #7

    うーん (日曜日, 23 10月 2016 01:09)

    らっこちゃんねるさん的には「ありのままを受け入れろ」なんですね。
    でも、言ってみたら「アイドル(人間がそう仕立ててるだけだけど)が枕営業してた」レベルの話じゃないですか。
    ファンで居続ける方がどうかしてますよ。
    実際、ラッコのこういう面を隠しつつ商売に利用してる人は悪辣じゃないですか。
    管理人さんもそういう人の手管にかかってラッコ好きになっちゃったわけでしょう。
    で、ラッコ好きがアイデンティティになってるから今更嫌いになれないだけでしょう。
    その矮小さを隠せてるつもりでしょうけど、見え透いてますよ。
    自分は寛大だ、平等な視点を持ってる、自然を理解してる、っていう格好付けをしたいだけでしょう。
    あなたが守りたいのはラッコ好きな自分でしょう。

    大体、「非難するな」っていうのは一見優しくて思慮深い人に見えますけど、言論統制でしか無いですよ。
    押しつけがましくて息苦しい人間ですよ。

    そもそも、こういうPRの場で悪い部分なんて何が何でも見せちゃダメなんですよ。
    それを敢えて見せるのは粋がりであり、勇み足です。
    このサイトでこの件を取り上げるべきじゃなかったんです。
    この件を知って、大半の人はラッコを「汚らしい畜生」としか思いません。それがあなたの望んだ結果ですか?
    アイドルのファンが枕営業バラして、「それでも俺は好きだ!」って言ったら、嫌がらせでしかないですよね。
    しかもわざわざ昔の記事引っ張り出してまで、ですよ。
    「ラッコを守る」なんて仰いますが、この記事によってこの件を知ってラッコを嫌う人は絶対いるでしょうし、
    中にはラッコをわざわざ探しに行って虐待する連中が出てきてもおかしくないんです。

  • #8

    鹿田 (日曜日, 25 12月 2016 01:45)

    ラッコってラッコ。
    人間は人間。
    色々居るのに。
    人間は聖人から異常者ってカテゴライズするけど、ラッコはラッコ。
    十把一絡げ?
    人間もラッコも、こんな自分さえ良ければ良い生き物が、周りを犠牲にしながら楽しく行きていくんじゃないかな。
    それが良いとか悪いとかじゃなく。
    個人的には嫌いだけど。

  • #9

    池田陽一 (水曜日, 18 1月 2017 04:33)

    漫画のネタで見たけどまさか事実だったとは。
    イルカなんかはこういった行為をすることは割と周知されていたけどラッコは知らなかった。
    動物を神聖視しないでこういったありのままの側面をきちんと伝える方が有意義そうだなぁ。

  • #10

    えええ (金曜日, 10 2月 2017 10:43)

    ショックです。なんか鳥ってのは北欧の男女みたいにつがいで子育てしてそれぞれ餌もとってくるのに対し、ラッコってなんかアラブ人みたい。あと熊とかもアラブ系ですよね。オスの強いのが絶対的に強く、弱いオスとメス 子供は言いなりでその雄次第で殺されたり強姦されたりされる状態
    なんか哺乳類の方がアラブ的なのが多く。鳥類に全部ではないがペンギンとかみたいにオスとメスが共同子育てエサ取りって感じで北欧タイプ

    なんか鳥は糞をするから苦手って人いるが、自分はラッコや熊の方が生態しって苦手になった メスと子供と弱いオスは殺され放題なんて


    日本的なメスはひたすら守られてってのは本当いませんね やはりどちらにしてもメスもある程度強くないとやってけないが。
    か弱いメスがもてはやされるのは日本だけかも(あとまあ韓国とか台湾といったアジアあたりも)中国は北欧に近く女性もバリバリ強くて働いてるので

  • #11

    paradoxobaraq (土曜日, 04 3月 2017 00:19)

    YOU・TUBEからこちらの「らっこちゃんねる」」に来ました。

    先ずは、これだけたくさんの記事や写真・動画を見やすく編集されている管理人さんに感謝してます。
    ラッコの生態に興味を持ち、可愛さだけでなくいろんなことを知りたいと思って拝見させていただいてるうちにこちらの記事に辿り着きました。

    私は、こうした自由な書き込みの場で他人を批判するのは好きではないのですが、管理人さんに対する人格否定的な書き込みを目にしてしまったので、らっこちゃんねるさんへの応援メッセージを書き込みをさせていただきます。

    私の考えですが、辛辣で批判的な書き込みをされている方はラッコが好きでショックで反論してしまったのではないかとあえて優しく推測します。
    生きているもの全てがこの自然界の中で何かに生かされています。動物はそれを自然のこととして生まれ役割を終えていっているだけです。

    情報化社会で自由に情報が手に入る時代ですから、ありのままの事に正確に記している当サイトは貴重であり、臭い物には蓋をして見えないことこそが言論統制であり、知る権利の侵害でもあります。
    <「らっこちゃんねる」以外のサイトでは面白おかしく紹介しているところもあった>

    管理人さんとお会いしたことありませんので、真意やお人柄は分かりませんが、非常に洗練された情報ブログの存在は只々頭が下がる思い出拝見させていただいておりますので、初心貫徹で無理なくこのサイトを続けていただきたいとお願いいたします。

    いろいろとご苦労があるかとは思いますが、応援している者も多いと思いますので、これからもよろしくお願いいたします。

  • #12

    other (土曜日, 17 6月 2017 19:05)

    Hey guys, this is about natural science. What's going on?

  • #13

    通りすがり (木曜日, 20 7月 2017 21:54)

    人間も、今の一夫一妻制じゃなければ
    こういうことは起きる可能性は高いよ

    特にオスというか、男性の感覚。
    自分は女だからよくわからんけど
    セックスするというハードルと
    相手の意思を尊重する感覚の低さにビックリすることがあるよ。

    レイプされたっていう最近の訴えだって
    被疑者を擁護してる輩見て
    動物と変わらんと思ってるよ。
    それが子孫繁栄って言うなら何も言えんし