【記事】ラッコの歯のエナメル質は人間の2.5倍の強さ | Researchers find sea otter dental enamel 2.5 times as strong as humans

本日は10月15日付のphys.orgの記事、"Researchers find sea otter dental enamel 2.5 times as strong as humans"をご紹介します。カニの殻や貝を噛み砕くラッコの歯は、かなりの強度があるようです。確かに固いものを齧っているときにはけっこういい音がします。

 

アメリカ・ドイツ・クウェートからなる研究者のチームが、ラッコの歯のエナメル質が人間の歯のエナメル質の約2.5倍の強さであることを発見しました。バイオロジーレターズ誌で発表された研究によると、ラッコの歯には、タンパク質の豊富なゲル質が多層になっていて歯をより強くしているという分析をどのように行ってきたか、またその発見により、大昔の人類の祖先についての研究に影響を与える可能性があることについて言及しています。


そのチームによる研究は、遊び好きな海の生き物であるラッコが歯を痛めることなくどのように貝やカニをこじ開けているのかという、単純な好奇心だけからでなく、人類のはの歴史についてもっと学ぼうという努力から行われたものでした。


ラッコの歯とエナメル質が非常に強いということを発見するために、研究者たちはラッコの頭蓋骨から歯のサンプルを集め、かかった力を表示できる圧縮機を用いて噛む実験を行いました。それにより、ラッコの歯は人間の歯より2.5倍もの力に耐えられることがわかったのです。


顕微鏡で歯を見てみると、ラッコには人間より多くのひび割れを防ぐ層が存在しているのを見ることができました(ラッコが1ミリメートルあたり19層あるのに対し、人間は14層)。その歯のひび割れを防ぐ層は、ラッコにおいても人間においてもタンパク質の多いゲル質からできており、ひび割れが増えるのを防ぐ役割をはたしています。研究チームは、また、ラッコの歯のエナメル質の層は人間のものよりもより多くの円形のパターンで構成されているということについて述べています。


そのチームによる発見は、別の意味でも興味深くあります。人類の祖先の一つ、ボイセイ猿人(パラントロプス・ボイセイ、1万2000年から2万3000年前)は、現代のラッコと同じ数のひび割れ防止層が歯にありました。これはつまり、私たちの初期の祖先がかなり固いものを歯でこじ開けていたということを示唆しています。この研究はボイセイ猿人の食生活を知る手がかりとなり、また長い時間をかけて歯が弱くなってきているということを示しているのです。

 

詳しい情報はこちら: Biol. Lett. October 2014 vol. 10 no. 10 20140484. DOI: 10.1098/rsbl.2014.0484

参考誌: Biology Letters