【記事】ラッコの毛の秘密 | The Fantastic Fur of Sea Otters

本日は2015年1月6日付のKQEDの記事、"The Fantastic Fur of Sea Otters"をお届けします。ラッコが冷たい海でも生きていくための必需品、体毛の秘密に迫ります。

※埋め込まれている動画の書き起こしは次回ご紹介いたします!

多くの観光客を水族館へ引き寄せ、砕波線の向こうのケルプベッドに浮かぶ、遊び好きなマスコット。カリフォルニアラッコ(Enhydra lutris) は、地球上で、もっとも密な体毛をもつ動物です。

 

1平方インチあたり100万本(=1平方センチメートルあたり約155,000本)という密度を持つ非常に柔らかい毛皮は、かつて猟師たちにとって非常に魅力的なものでした。そのため、1900年代初めには、ラッコは絶滅近くまで追い込まれてしまいました。しかし現在、国により保護され、ラッコたちは自分の豊かな毛皮を大切な目的のために使うことができます。冷たい太平洋の海で、とくに冬の間、体温を保持するということです。


「ラッコは冷たい海に住んでいますが、その海はラッコとっては冷たすぎるのです」とヘザー・リワナグ氏は言います。リワナグ氏は、カリフォルニア大学サンタクルーズ校で博士号の研究の一環としてラッコの体毛について研究した生物学者です。

ラッコの生息域は全て「温熱中間帯」つまり、哺乳類が体内温度を維持するためにエネルギーを費やさずに生きていける温度帯から外れていると、リワナグ氏は述べています。

としたら、ラッコはどうやって体温を維持しているのでしょうか。皆さんが暖かいブランケットを使うのと同じです。ただ、空気のブランケットなのです。


「ラッコは、断熱のために体毛を利用していますが、断熱の働きをしているのは実は体毛そのものではありません」現在、ニューヨーク州のアデルファイ大学で生物学の助教授であるリワナグ氏は言います。

もしラッコが体温を維持するために脂肪層を使っていたら、

そのために必要な脂肪の量は

ラッコそのものより多くなっていたでしょう。


— ヘザー・リワナグ
アデルファイ大学生物学者


実は、体毛が皮膚のすぐ周りに抱え込んでいる空気の層が断熱の働きをしているのです。ラッコの体毛は2つの特性により、断熱の働きをする空気の層を作ることにとくに長けているのです。その特性とは、密度が高いこと、そしてトゲトゲであることです。

ラッコのガードヘアの電子顕微鏡写真。とげ状の小片により、ラッコの毛に冷たい海からラッコを守る防水の層が形成されている。(ヘザー・リワナグ/アデルファイ大学)
ラッコのガードヘアの電子顕微鏡写真。とげ状の小片により、ラッコの毛に冷たい海からラッコを守る防水の層が形成されている。(ヘザー・リワナグ/アデルファイ大学)
電子顕微鏡によるヒトの毛髪の画像。うろこ状の模様が見える。(ミン・グァンウェイ/カリフォルニア大学バークレー校)
電子顕微鏡によるヒトの毛髪の画像。うろこ状の模様が見える。(ミン・グァンウェイ/カリフォルニア大学バークレー校)

ラッコの体毛は、人間の頭髪に比べて10倍の密度があります。しかし、滑らかに完璧に櫛でといても、何の良いこともありません。ラッコは、毛皮の中に吹き込んだ空気が出て行かないよう、できるだけ毛を絡ませておきたいのです。そこで、とげとげしたところが役立つのです。


ラッコの体毛は私たちには非常に滑らかで柔らかく感じますが、顕微鏡で見てみると毛の表面が小さな幾何学的な棘状の物で覆われているのがわかります。この棘がもつれた毛をしっかりと引き寄せるので、ラッコの体のそばの毛はほとんど乾いているのです。身体を濡れずに保つということはつまり、身体を保温することなのです。


ラッコの断熱機能には、いくらか不利な点もあります。ラッコの断熱機能は毛に捉えられた空気に依存しているため、深く潜ることができません。水圧で空気が出ていってしまうからです。また、空気は身体を浮きやすくするため、潜ることは非常に骨が折れるのです。ラッコは、水に潜り続けるため、石を掴んだりケルプを掴んだりすることもあります。

油は、ラッコの体毛が断熱機能のある空気を閉じ込める力をだめにしてしまいます。

油がついた部分は明るい赤になっており、そこからはラッコの体温が漏れていることが分かります。
(カリフォルニア州魚類野生生物局)

※画像の中央部に表示される緑のボタンを左右に動かすことができます。


断熱し保温するために空気の泡を利用するという独特な方法により、原油の流出はラッコにとて非常に危険なものとなりました。油が付着すると毛が固まってくっついてしまい、空気を蓄えることを防ぎます。断熱機能がなくなってしまうと、冷たい海からラッコを守ってくれるものがなくなってしまいます。油に汚染されてしまったラッコが低体温症になり死んでしまうまでには長くはかかりません。


クジラやアシカのような他の多くの海洋性哺乳類は、別の方法で体温を維持しています。脂肪の層です。


リワナグ氏は、2012年に発表した論文の研究で、様々な条件下で毛皮と脂肪層による断熱能力を比較しました。海洋環境下で体温を維持するため、それぞれの種がどのように適応していったのかを学びたかったのです。


「この論文を書くにあたり、私は脂肪層のほうがより良い断熱効果を持つと予想していました。様々な系統の中で、なんども発生してきたからです」とリワナグ氏は述べました。しかし、そうではなく、毛皮、というよりは空気のほうが比較的浅いところでは温かいということが分かったのです。


「もしラッコが体温を維持するために脂肪層を使っていたら、そのために必要な脂肪の量はラッコそのものより多くなっていたでしょうね」

記事元:KQED Science

The Fantastic Fur of Sea Otters

Joshua Cassidy, KQED Science | January 6, 2015