【記事】ラッコの啓蒙大使「オリーブ」、サメの咬み傷により死亡 | Species Ambassador Olive the Sea Otter Dies After White Shark Bite

本日は3月27日付のseaotters.comから、"Species Ambassador Olive the Sea Otter Dies After White Shark Bite"をお届けします。以前、こちらの記事でもお届けした、自然湧出による油に汚染され救出されたラッコ「オリーブ」。彼女の死は私たちに何を遺してくれたのでしょうか。

「ラッコのオリーブ」は2009年に救出され、カリフォルニア州魚類野生生物局で回復した
「ラッコのオリーブ」は2009年に救出され、カリフォルニア州魚類野生生物局で回復した

カリフォルニア州魚類野生生物局は、「オリーブ」という名で知られるラッコがサメの咬み傷により死んだと発表しました。オリーブは7歳程度であったと推定されています。科学者たちがオリーブを最後に確認したのは2015年2月15日のことで、3月22日、一般人がオリーブが死んでいるのを通報してくれました。2009年に保護されリハビリと受けてから、オリーブはラッコや他の油に影響を受けた野生生物の啓蒙大使となりました。カリフォルニア州魚類野生生物局はオリーブの活動状況を「Olive the Oiled Otter(ラッコのオリーブ)」というFacebookページに綴り、5,000名以上がフォローしていました。


「オリーブの死体はかなり腐敗が進んでいましたが、傷はサメの咬み傷によるものと分かりました」そう話したのは、カリフォルニア州魚類野生生物局の生物学者コリーン・ヤング氏。オリーブの死体を調査のために回収した人物です。「また、傷の一つからホホジロザメののこぎり状の歯の大きな破片が見つかり、サメの咬み傷による死亡ではないかという私たちの推測は確証されました」


腐敗がひどく組織や内臓の健康状態を査定することは困難でしたが、カリフォルニア州魚類野生生物局の科学者たちはオリーブは良い健康状態で、全ての臓器は健康であったと判断しました。傷に癒えた様子がなかったことから、オリーブが致命的な咬み傷を受けた後すぐに死んでしまったことを示しています。「サメによる咬み傷はカリフォルニアラッコの死因で最も多く、過去5年間にわたりサメの咬み傷による死亡の増加に対する警告を文書化してきました」とヤング氏は言っています。ホホジロザメはラッコを食べてしまうわけではありませんが、咬まれて生き延びることはほとんどありません。


ホホジロザメによる咬み傷が原因の死亡率は高くなっていますが、カリフォルニアラッコはそれ以外にも、様々な原因で死んでいます。生態毒素(ドウモイ酸やミクロシスチン)、細菌感染、原生動物感染、他の寄生虫へのの感染、人間の直接的関与によるもの(銃撃、ボートによる衝突、釣り糸や漁具へのもつれ、ラッコ同士による傷(他のラッコによる傷、交尾の際の傷も含む)、ウイルス、飢餓・るいそう(痩せること)、また腫瘍や他の問題がラッコを死に至らしめます。通常、ラッコの死には1つ以上の要素が関わっています。野生の場合オスのラッコは通常10代前半、メスは10代半ばが寿命です。飼育下にある場合は一般的にもう少し長生きです。


「死の原因には自然なものもありますが、多くは人為的なものです。わたしたち人間は、こうしたことを最小限にしなければなりません」とヤング氏は言います。「ラッコが生きる海洋生息域や水の源である内陸の環境を復元し保護することにより、ラッコに対し人間が与える脅威を減らすことができます。私たちが思っているより、陸-海間の汚染がラッコにとっては非常に大きな問題なのです」

カリフォルニア州魚類野生生物局の原油流出予防対策室でアワビを食べるオリーブ
カリフォルニア州魚類野生生物局の原油流出予防対策室でアワビを食べるオリーブ

オリーブは2009年2月、サンセットビーチで濃いタール状の油が付着し浜に打ち上げられており、話題になりました。当時1歳程度であったと推定される若いラッコは、カリフォルニア沿岸沖に自然に湧出していた油に汚染されていました。カリフォルニア州魚類野生生物局、海洋哺乳類センター、モントレーベイ水族館、カリフォルニア大学サンタクルーズ校ロングマリン研究所によるチームが編成され、オリーブは保護され、洗浄され、リハビリを受けました。オリーブは温かい軟水の水槽で元気を取り戻しました。これは、カリフォルニア州魚類野生生物局、カリフォルニア大学サンタクルーズ校、モントレーベイ水族館、カリフォルニア大学デイヴィス校OWCN(原油汚染野生生物ケアネットワーク)による新しい手順に沿ったもので、回復にかかる時間を劇的に向上させました。野生に帰した後も追跡観察できるよう、チームによりオリーブには無線装置と色のついたタグが装備されました。


2009年4月に野生に戻してから、カリフォルニア州魚類野生生物局はオリーブを2011年12月まで断続的に観察していました。2012年1月からはより頻繁に、科学者たちにより週に1度のペースで観察が行われ、オリーブの健康状態と出産の成功を記録してきました。2012年7月、オリーブは健康診断のため再捕獲され、血液の状態と他の数値は、野生の健康なラッコの値の範囲内であるということが分かりました。その検査時オリーブは妊娠しており、2012年の8月の終わりもしくは9月のはじめ頃、最初の子どもを出産しました。その子どもを独り立ちさせた後、オリーブは2度出産し無事育てあげ、絶滅の危機に瀕する種の保存に関する法律により「絶滅の恐れがある」と規定されているカリフォルニアラッコの生息数の増加に大きく貢献してくれました。


オリーブの突然の死は、数年にわたりオリーブの様子を見守ってきた多くの研究者たちや一般の人々に対し悲しみをもたらしましたが、その生涯はラッコに関して非常に多くのことを学ぶとてつもない機会を与えてくれました。

「私たちにたくさんのことを与えてくれたオリーブに、本当に感謝しています。オリーブは、私たちが研究した油に汚染されたラッコに対する新しい洗浄法、すすぎ方、回復方法を用いれば、非常に弱っていたり、飢えていたり、タール状のものに酷く汚染されていたりするラッコでも助けることができるということを示してくれました」とデイビッド・ジェサップ氏は述べています。ジェサップ氏は、カリフォルニア州魚類野生生物局の獣医ですでに退職していますが、オリーブの最初の洗浄とリハビリを監督した人物です。「オリーブは、油に汚染されたラッコであってもごく普通の健康的な生活を送り、健康な子どもを産み、よき母親になり、そして自然な原因によることで死んでいくということを私たちに示してくれたのです」

【参考記事】
【記事】油に汚染されたラッコ、オリーブのお話 | The story of Olive the otter

2009年、自然湧出による油が付着しているところを保護されたラッコ、オリーブ。新しい洗浄・リハビリ技術により回復し、自然に帰ることができました。

記事元:

Seaotters.com

Species Ambassador Olive the Sea Otter Dies After White Shark Bite

March 27, 2015 by CDFW