【記事】ラッコと関わる仕事(4)ラッコ研究者| Otter Careers 4 : Sea Otter Researcher

6回シリーズで、Otter Projectのウェブサイトから"Otter Careers"を一つずつご紹介しています。今回は著名なラッコ研究者の一人、ティム・ティンカー氏です。

アメリカ地質調査所野生生物研究者、カリフォルニア大学サンタクルーズ校助教授 ティム・ティンカー博士

ティム・ティンカー氏
ティム・ティンカー氏

どんなお仕事ですか?


私はカリフォルニア州とアラスカ州で実地調査を行っています。ラッコの群れの調査、野生のラッコを捕獲し無線装置を取り付けての個々のラッコの追跡調査(視覚的、ラジオテレメトリー(無線による遠隔測定)の両方)を行い、ラッコの動きや生存、繁殖、食生活や行動などについてのデータを集めています。そして、私のデータと他の科学者たちが集めたデータをある関連するテーマ(例えば汚染物質、遺伝学、病理学、海洋学など)でまとめ、分析して、ラッコとラッコの住む環境の関わりについてより理解を深めるのです。そして最終的にはその結果を研究論文やプレゼンテーションとしてまとめます。

どんな勉強が必要なのでしょうか?

私は動物学で学士、生物学で修士(カナダでハイイロアザラシの研究をしました)、生態学と進化学で博士号を取得しました。私の研究においては、数学と科学におけるしっかりとした基礎が必要です。その範囲は一般生物学から生物化学、海洋群衆生態学、集団遺伝学に及びます。私が行っている個体群動態(ある特定の地域においてラッコの個体数がどのくらい速く回復するか予測する 等)に関する分析研究の多くは、行列代数や微分積分なを含む数学を基礎としたスキルが必要です。他の研究者に対し効果的に研究発表を行うたけに、完結にはっきりと書くスキルもまた非常に大切ですし、発見したことを一般の皆さんに伝えるために、人前で話すスキルというのも大切です。

この仕事に必要なパーソナルスキルは?

 一方で、アラスカのアリューシャン列島などの遠隔地で実地調査を行う際に一番価値のあるスキルはそのような学術的なものというよりはもっと実際的なものです。たとえば船の操作、自然でサバイバルする方法、体力、快適でない状態(濡れたり強風に晒されたりなど)を我慢できること、そして最も重要なのは、良きナチュラリストであり、自然観察者であるための忍耐力です。

仕事で一番楽しいと思えることは何ですか?

この仕事で一番いいのは、おそらく、美しい遠隔地で、魅力ある動物たちと関わる機会があること、そして、そうした研究を本当に素晴らしい、献身的な人々と一緒に行う機会があるということだと思います。

仕事で一番嫌な部分は何ですか?

この仕事で一番苦手なのは、おそらく、会議や果てしなく報告書を書いたり編集したりすることです。しかし、こうしたことは必要な仕事だということも理解しています。

ラッコに関して何か面白い話はありますか?

ラッコにタグを付けるために捕獲する際、私たちはラッコに麻酔の注射を行い寝かせてからラッコを扱ったり、大きさを測定したりタグを付けたりします。非常にまれに、注射針が必要な部分(筋肉)に届いていない場合があり、麻酔薬が毛皮の上に流れることがあります。しかし、通常はラッコがよく動くため、すぐに分かります。ある時、アラスカでこういうことが起こりましたが、ラッコがちゃんと寝たように見えたので私たちは全く気が付きませんでした。輸送用の箱を開けると、うわっ!大きなオスのラッコが箱から飛び出し、ツンドラへ逃げて行きました。そしてラッコと人間4人による鬼ごっこが始まりました。ついにラッコを角に追いつめた時、私は網を持っていませんでした。(別の人が網を取りに行っていました)私は、心配しつつも怒って歯をむき出して唸っている、90ポンド(約40kg)のラッコと面と向かい合っていました。そのラッコは、最後の手段だと私を追いかけはじめたのです!運よくその時誰かが網を持って駆け付けたので、そのラッコを再度捕まえることができました。

ラッコに関して個人的に報われたと思ったことはどんなことですか。

2年、3年をかけて個々のラッコの母親を観察していますが、その母親が子どもを産み、6か月かけて辛抱強く子どもに餌を与え、毛づくろいをし、世話をして、最終的に健康な若者のラッコを育て上げるのを見ると、報われたと思います。ラッコの母親は本当に心に残ります。

何故ラッコと関わる仕事をしようと思ったのですか?

実際、意識的にラッコと関わる仕事をしようと決めたわけではありませんでしたが、思わぬ偶然がこのように決めてしまったのです。意図的に決めた研究は生態学で、特に個々の種とその環境の関わりや、ある集団と環境群衆全体の力学です。いろいろな機会があり、気が付くとバスコティアでハイイロアザラシの研究を行い(修士の研究)、それからアラスカでラッコを研究していました。今は、ラッコの研究をやめることができなくなっているようですね。

その仕事が重要だと思った理由は何ですか?

ほぼすべての生態系における人間の影響は増大しています。それはつまり、良い保護政策の必要性が今まで以上に重要になってきているということです。ラッコや、他の絶滅の危機にある動物や植物、その生息域の場合、有効な保護活動に必要な情報や知識を得るために実地調査は欠かせません。もう少し哲学的なレベルでいうと、人間としてできることの中で一番いいことは、自然がどのように機能しているかを学ぶことであると思います。その中心で、それは科学者として私たちがやっていることでもあると思っています。

もしその仕事に興味を持っている人がいたら、今すぐにできることや、関われることはどんなことですか。

生物学に興味を持っているなら、一番いいのはノートとフィールドガイドブック、双眼鏡と虫めがねをもって自然の中へ飛び出し、森や潮だまりを観察することですね。自然を観察して手を汚すほど、学びたくなっていくでしょう。実際の方法としては、ナチュラリストやボランティアと一緒に地元の公園や水族館に参加してみるというのもいいでしょう。

ラッコについてより多くのことを学べるようなウェブサイトはありますか?