【記事】ラッコの研究に無人航空機を活用 | Alaska researchers study sea otters with unmanned aircraft

本日は6月4日付の PHYS ORGより、"Alaska researchers study sea otters with unmanned aircraft"をお届けします。何かと話題のドローン(無人航空機)ですが、アラスカではラッコの研究にも活用されているようです。

無人航空機から撮影されたラッコ。何か食べている様子。Credit: ACUASI
無人航空機から撮影されたラッコ。何か食べている様子。Credit: ACUASI

研究者にとって、海棲動物の行動や生息数に関するデータを収集するのは実に長々と時間がかかるものだが、最近の研究によると無人飛行機がそうした障害を避けられるようになるかもしれない。

 

アラスカ大学フェアバンクス校の科学者たちは、最近2つのフィールド調査を行った。無人飛行機が様々な高度から干潮時の浜で高解像度の写真を撮影することができるか、そしてまた、ラッコたちを邪魔することなく上空から撮影できるかを調べるためだ。

 

「たいてい、ラッコはほとんど気にすることはなかったようです」アラスカ大学フェアバンクス校、海洋水産化学部教授、ブレンダ・コナー氏は言う。「ゆっくり泳いでどこかへいってしまうものもいましたが、ほとんどは食べることにより関心があったようです」

 

アラスカ大学フェアバンクス校海洋水産化学部と海洋学部の研究者らは、2つの研究においてより効果的により良いデータを収集するために、地球物理学研究所のチームに無人航空機システムインテグレーションを使えないかと打診した。1つ目の研究はアメリカ地質調査所と共同で、ラッコが餌を食べている際に邪魔することなく、無人航空機を使って上空から高解像度の写真を撮影することができるかを調べるために行われた。2つ目の研究は無人航空機を使い、観察プログラムをより効果的にする目的で干潮時の浜の写真を撮影するために行われた。こうした試行研究が有効であると証明されれば、さまざまな場所でこの技術が応用される可能性がある。

 

無人航空機システムインテグレーションはアラスカ州ホーマーで行われる実地試験のために回転翼の機体2機を送った。

 

「現在、浜にどんな植物や動物が生息しているのか記録したいのです。そうすれば、自然な変化や気候変動によると思われる変化をモニターすることができるからです」とコナー氏は言う。「これによって、原油流出事故のような大きな事件の場合、どのような変化が起こるのかを知ることができるのです」

 

これまで、コナーや海洋水産化学部のカトリン・アイケンやそのチームたちは、モニター研究を行うビーチでのフィールドワークの際、浜に設置したPVC製の枠が露出するまで潮が引くのを待たなければならなかった。それからその枠内にある巻貝やヒトデ、ケルプ、海草の房や他の生物を数えるのだ。

海草に覆われた浜に、計測用のPVCの枠が見える。無人航空機より撮影。Credit: ACUASI
海草に覆われた浜に、計測用のPVCの枠が見える。無人航空機より撮影。Credit: ACUASI

「私たちは、自然な変化をモニターしたいのです」とコナーは言う。「そうすれば、原油流出事故のような大きな事件が起こった時どのような変化があるのかを知ることができるのです」

 

一つの浜を調査するには約4時間かかるが、潮が満ちてきたらそこで終わりになってしまう。そのような短時間では、調査できる浜の数も限られてしまう。無人航空機を使えばより多くのデータを収集することができると言う。

 

浜の調査は成功も後退もあったが、これは科学の世界では皆経験することなのだと無人航空機システムインテグレーションのエンジニアでプロジェクトマネージャーでもあるサム・ヴァンダーワール氏は言う。

 

「上空からデータを集めることもできましたが、より高解像度の写真が必要だったのです。これはアイデアを実現させることでしたので、より詳細なものまで得ることができるのです」

 

ラッコの研究分野では、アメリカ地質調査所アラスカ科学センターの研究者、ダニエル・マンソン氏は、ここ数年科学者がラッコの給餌を観察する際に無人航空機がどのように役立つかを考えていた。現在、ラッコが餌を獲るためにどのくらい潜っているか、何を獲って上がってきたか、食べるのにどのくらい時間をかけたかなどを調べるためには、研究者たちは浜に立って強力な望遠鏡で見るしかなかった。望遠鏡はある距離までは見ることができるが、浜から遠い場所ではラッコが何をどう食べているのかを捉えることができない。船のような揺れる場所では望遠鏡を扱うのは難しいため、研究者たちは浜から調査するしかないのだ。

 

無人航空機がラッコの行動に影響を及ぼさないのであれば、そうした観察の際の問題を解決できるかもしれない。おおかたラッコはクアッドコプター(回転翼が4つついた航空機)の音を気にすることはなく、食べ続けているとモンソン氏は言う。

陸からラッコが食べる様子を観察する研究者たち。Credit: ACUASI
陸からラッコが食べる様子を観察する研究者たち。Credit: ACUASI

「非常に便利なものだと思います」とモンソン氏は言うが、思っていたより難しい。


「最初、小さいヘリコプターで誰でも飛ばせるものかと思っていました。しばらくは無人航空機システムインテグレーションの人にやってもらわないといけないでしょうね」


無人航空機システムインテグレーションは連邦航空局から無人航空機を飛ばす公的な許可を得ているため、航空機を専門的に扱う必要がある許可を大幅に簡素化してくれる。


モンソン氏は、無人航空機を使えばタグを付けたラッコを捕獲することなくデータを集めることができるかもしれないと考えている。また、アリューシャン列島のような、有人航空機で飛ぶのは難しい辺鄙な海岸でモニターするのに役立つだろうとも考えている。


無人航空機でこんなことができるだろうかと想像することと、実際できることはしばしば異なっている。これらの2つの研究で使ったように、少しずついくつもの段階を経ていくものだヴァンダーワール氏は言う。


「私たちは、航空機とそれを飛ばすためのチームを派遣しています。わたしたちは専門家です。しかし、私たちもまた、彼らのプロセスに無人航空機をどう取り込んでいくかを学ばなければなりません」