【記事】ラッコの道具箱 | A Sea Otter’s Toolkit

 本日は2014年9月23日付のオレゴンコースト水族館のブログから、"A Sea Otter's Toolkit"をお届けします。ラッコの様々な便利道具をご紹介しています。

道具を使う動物と言えば、多くの人は霊長類を思い浮かべるでしょう。しかし、道具を使う動物は他にもたくさんいるのです。ラッコは海洋哺乳類の中では最も器用な動物で、生息環境で繁栄するために独自の適応を遂げ、道具を使うようになりました。ここに、ラッコの道具箱に不可欠な9つのものを集めてみました。

1.ポケット

トレーニングセッションで手のひらを見せるヌカ - Photo Credit Brent McWhirter
トレーニングセッションで手のひらを見せるヌカ - Photo Credit Brent McWhirter

ラッコの脇の下の皮膚はたるんでおり、水面に戻る際にできるだけ多くのエサを入れるのにポケットとして使います。この写真はラッコのヌカです。水族館のトレーニングセッションでターゲット(注)に手を伸ばす際に、のそのたるんだ部分が見えます。またラッコはそのポケットを石を入れるのにも使います。
訳者注:棒の先に丸いものがくっついているトレーニング用の道具で、指示に合わせて丸い部分に手や鼻をくっつけ静止する。主に、ラッコの体長などを調べたりする際にラッコが動かないようにするためのトレーニングとして行われる。

2.石

ラッコは貝やカニ、その他の殻のあるエサをお腹の上で割るために石を使います。また、海底でアワビを獲る際、石を使って15秒に45回もアワビの殻を叩き、しっかりくっついているアワビの吸盤をゆるくします。気に入りの石を脇の下のポケットに入れて持ち歩くラッコも少なくありません(注)。GIF画像のクレジットは画像に記載されています。
訳者注:実際、道具として使った石は使ったあとすぐに捨ててしまう。こちらを参照。オモチャとして気にいっている石はしばらく持ち歩くこともあるが、何日も持っていることはないようだ。

3.強靭な歯

カニの脚がはいった氷を楽しむモジョ
カニの脚がはいった氷を楽しむモジョ

ラッコは顎の力が強く、鈍歯でカニや他の動物の殻をかみ砕くことができます。

4.密な体毛

考え事をするオズワルド
考え事をするオズワルド

ラッコは動物の中で最も体毛の密度が高く、1平方インチ当たり100万本以上の毛が生えています。他の海洋哺乳類は脂肪層で体温を維持していますが、ラッコにはその脂肪層がないため、ラッコの住む冷たい海から体温を守るため十分な毛づくろいをし毛の間に空気を取り込まなければなりません。

5.敏感な鼻

初対面のジャッジとヌカが鼻を突き合わせている
初対面のジャッジとヌカが鼻を突き合わせている

かつて研究者たちは、海洋哺乳類は水中でエサを探すため、嗅覚はあまり強くないと考えていました。オレゴンコースト水族館では研究者たちと協力し、ある道具の匂いをかがせ、何かの匂いを感知したらトレーナーに知らせるよう、あるラッコの訓練を行いました。ラッコが、犬の嗅覚にも劣らない、非常に僅かな匂いの痕跡を判別することができたため、研究者たちはショックを受けていました。

6.ケルプ

ケルプを模した洗車用の布きれで遊ぶラッコ
ケルプを模した洗車用の布きれで遊ぶラッコ

ラッコはケルプの森とシンボリックな関係を持っています。ラッコは外洋のうねる波で流されないよう、ケルプを体に巻き付けます。またラッコは外敵から身を守るためにケルプに身を隠し、エサとなる動物をケルプの森から得ています。ラッコはウニや他のケルプを食べる動物をエサとしています。ラッコがいなければ、ウニのような動物が大増殖し、多種多様な動物の棲家となっている海の森を破壊してしまいます。当館では、野生のラッコが使うケルプの変わりとして、洗車用の布をラッコたちに与えています。

7.水中で閉じられる鼻と耳

Photo credit Thomas Patterson for the Statesman Journal
Photo credit Thomas Patterson for the Statesman Journal

ラッコの耳ほど潜水に適したものはありません。ラッコは自由自在に鼻と耳を閉じることができます。これは生涯のほとんどを水の中で暮らす動物として適応した重要なことです。ラッコは冷たく荒れ狂う海でエサを探して泳いだり潜ったりする際、最長5分ほど息を止めることができます。

8.ヒゲ

ラッコは濁った水の中でも、ヒゲを使って振動や動きを感知することができます。

9.強力な前足と足ひれ

ラッコの前足には出し入れできる爪があり、グルーミングをしたり、水中でエサを見つけたり獲ったり、道具を使ったりすることができます。水かきのついた後ろ足と舵のようなしっぽで進みます。ラッコの後ろ足は水かきがありヒレ状になっていて、下半身の動きと合わせて水の中を進むことができます。

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当館で行われる9月27日のラッコ啓蒙週間のお祝いで(注)、ラッコについてよりたくさん学んでいただけます。当館のラッコたち、ジャッジ(14歳)、シャスター(3歳)、ヌカ(1歳)、オズワルド(10か月)が、水族館の来場者に無料で提供される様々な教育活動を一緒にもてなしてくれます。
訳者注:昨年の情報


こうした努力により、オレゴンの皆さんの心の真ん中に、ラッコの居場所ができるよう当館は希望しています。イタチ科の仲間であるこの海の動物ラッコは、沿岸海洋生態系において非常に重要な役割を果たしています。ラッコ(学名Enhydra lutris)は、オレゴンの沿岸からは絶滅したと考えられており、現在生息している地域では絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律にリストアップされています。ラッコについてより学びを深めるために、aquarium.orgを訪れてください。

Oregon Coast Aquarium
A Sea Otter's Toolkit

BY ORCOASTAQUARIUM | SEPTEMBER 23, 2014