【記事】カリフォルニアラッコ、増加傾向もサメの噛みつきによる問題増加 | Numbers Encouraging, but Shark Bites Still Problematic for Sea Otter Recovery

 本日は2015年9月17日付のアメリカ地質調査所(U.S. Geological Survey)のニュースリリースから、"Numbers Encouraging, but Shark Bites Still Problematic for Sea Otter Recovery"をお届けします。今年のラッコの個体数調査の結果とそれに対する分析が出ました。個体数は3,054頭と増加をみせているものの、生息地北端南端でのサメによる被害が急増しています。

This southern sea otter is settling down to rest in a small patch of Egregia (feather boa kelp).
This southern sea otter is settling down to rest in a small patch of Egregia (feather boa kelp).

カリフォルニア州サンタクルーズーアメリカ地質調査所が本日発表した年次カリフォルニアラッコ個体数調査の結果によると、本日カリフォルニアラッコの個体数は回復傾向に見られる。しかし、全体的に個体数が増加しているにもかかわらず、新しいエリアに広がろうとしていたラッコの数をサメが「ひと齧り」してしまっている。

 

「主要な発見が示すものよりも、ここのストーリーにより多くのものがあるのです」とアメリカ地質調査所のラッコ個体数調査プログラムを率いる調査生態学者のティム・ティンカー博士は言う。「私たちは、調査の結果に影響を及ぼしていると思われる様々な要素を調べています。それには、ビッグサーからモントレーにかけてウニが大発生も含まれており、そのウニの大発生により生息域中央部での個体数が増加したものと考えられています。そして、サメの噛みつきによる死亡の増加により、生息域北端及び南端で個体数が減少している原因となっています」

 

今年の調査の結果、過去5年は年2%の割合で増加傾向にあり、過去3年の平均値として計算された統計的な総合個体数である個体数指数は、2010年の2,711頭から3,054頭へと増加した。これはラッコの生息地の中央部であるモントレーからカンブリア南部にかけて、予想外にウニの数が急増したことが要因ではないかと思われる。

 

「過去数年赤ちゃんの個体数が多かったのですが、そのおかげで生息地中央部での若いラッコや成獣の個体数が高くなったようです」とアメリカ地質調査所の生物学者で年次個体数調査をコーディネートしているブライアン・ハットフィールドは言う。「これらのエリアでエサとなるウニがより多くとすれば、納得がいきます。しかし、長期的な調査データによると、モントレーからビッグサーにかけての沿岸におけるラッコの個体数の増加は長く続かないかもしれません」

 

個体数が増加傾向にある一方で、生息域の北部と南部の個体数は過去5年減少傾向にあり、年3.4%減少しているが、その数はどちらも同じエリアでのサメの噛みつきによる死の増加と一貫している。ホホジロザメによる噛みつきの増加は2005年以降明白になっており、最近発表された論文訳者注:【記事】急増するシャークバイト、カリフォルニアにおけるラッコの死因のトップにを参照)にあるように生息域の端における個体数の増加と広がりに影響を及ぼしている。


1980年以来、アメリカ地質調査所は年次個体数指数を算出し、カリフォルニアラッコ(Enhydra lutris nereis)、つまりカリフォルニアで見られ、国により絶滅の恐れがある種としてリストアップされている種、の傾向の評価を行ってきた。アメリカ魚類野生生物局によるカリフォルニアラッコ回復計画により制定された値によると、カリフォルニアラッコが絶滅の危機に瀕する種の保存に関する法律で定められた絶滅に瀕する動物のリストから除外されるためには、個体数指数が3年連続で3,090頭を越えなければならない。生息地の環境収容力や生態系の健全さを考慮しても、海洋哺乳類保護法のもとで持続可能な個体数レベルに達するには、回復計画によるとカリフォルニアラッコの個体数はもっとハードルの高い、恐らくは約8,400頭に届かなければならない。

 

「表面上個体数は回復に向かっているように見えますが」アメリカ魚類野生生物局のカリフォルニアラッコ回復コーディネーター、リリアン・カーズウェルは言う。「別の地域で奥に潜む傾向もまた、考慮しなければなりません。完全に個体数を回復するためには、南北への生息域の拡大が不可欠です」

Tania Larson U.S. Geological Survey
Tania Larson U.S. Geological Survey

カリフォルニア州の傾向と地域に見られる疑問点

年次個体数調査に加え、アメリカチシツ調査所の研究者たちは毎年カリフォルニア沿岸で回収された死んだラッコ、病気や怪我などで保護されたラッコを集計し、データベースをアップデートしている。2014年、カリフォルニア魚類野生生物局、アメリカ地質調査所、モントレーベイ水族館やその他の研究機関の研究者らが実際に回収したものや記録に残されたものを合わせると、合計386頭であった。


こうした遭難したラッコの数は、あくまで人が見つけたものだが、過去の調査によれば自然界で死んだラッコのうち最終的に浜に打ち上がるものは半数に満たない。しかし、通報のあったラッコを個々に調査する努力は行われており、まだ新しい死体についてはカリフォルニア魚類野生生物局海洋生物獣医学知慮研究センターへ送られ、主要な死因や個々のラッコを死に至らしめた要因を知るため、研究者によって検死が行われる


生きたラッコや死んだラッコから得られるデータは、カリフォルニア沿岸の様々な場所のラッコの生態系に光を投げかける。例えば、近年カユコスとピスモビーチの間で回収されたラッコの死体は高い割合でホホジロザメに噛まれた傷があったが、これはこのエリアでラッコのが減少傾向にある一つの説明になるかもしれない。

「2000年代以前はモントレーの南でサメに噛まれたラッコはそれほど多く見られませんでした」とカリフォルニア魚類野生生物局の生物学者、マイク・ハリスは言う。「しかし、ここ数年、サメに噛まれるケースが非常によく見られるようになってきていて、このエリアで浜に打ち上がったラッコの約70%を占めます」


個体数調査や打ち上がったラッコの調査プログラムは、ラッコと、沿岸生態系における捕食者としてのラッコの役割を調べる大きな研究プログラムのほんの一部にすぎない。最近の研究では、エルクホーン湿地帯では、ラッコがカニを食べることにより海草棚の健全性を向上させていると示している。また、アメリカ地質調査所の研究者たちはモントレーベイ水族館、カリフォルニア大学サンタクルーズ校、カリフォルニア魚類野生生物局の生物学者と協同し、この独特の生息地に住むラッコのたちを研究している。壊滅的な病気によりウニの捕食者であるヒトデが減少したこともあり、ウニが増殖してしまったが、それに対してラッコがどのような反応をするか、カリフォルニア大学サンタクルーズ校とアメリカ地質調査所はモントレーベイ水族館の協力を得てモントレー付近で新しい研究を行う予定だ。

調査方法

–  年次個体数指数は、アメリカ地質調査所、カリフォルニア魚類野生生物局の原油流出防止対応室、モントレーベイ水族館、カリフォルニア大学サンタクルーズ校、アメリカ魚類野生生物局、アメリカ海洋エネルギー管理局の研究者、学生、ボランティアにより、陸地からの望遠鏡による目視およびテイクウ飛行の飛行機による目視により行われ、算出されている。

–  今年調査が行われたのは、サンマテオ郡のピラー岬から南はサンタバーバラ郡・ベンチュラ郡近くのリンコン岬に及ぶ海岸、またサンニコラス島も含む。

ラッコについて

–  ラッコは毛皮貿易時代後、カリフォルニアでは絶滅したと考えられていたが、1930年代に一般人により再発見された。その当時わずか50頭がビッグサー海岸外れの沿岸に残っていたと記録されている。


–  ラッコは岩礁の下干潮帯の生態系においてキーストーン種とみなされている。ラッコは草食性の無脊椎動物をエサにしており、それらの無脊椎動物は放っておくとケルプ棚やケルプが提供する魚の生息地を滅ぼしてしまうからである。


–  研究者らはラッコを沿岸生態系の指標として研究している。ラッコは沿岸でエサを食べ暮らしており、沿岸地から流れ込む毒性微生物ミクロシスチンのような汚染物質や病原体に汚染される最初の捕食者だからである。


–  打ち上げられているラッコを発見した場合は、このウエブページに掲載されている施設に通報することになっている。


「2015年春季カリフォルニアラッコ個体数調査結果」(Spring 2015 California Sea Otter Census Results)のレポートはオンラインでこちらから見ることができる。


ラッコの写真はこちら

U.S. Geological Survey News Releease
Numbers Encouraging, but Shark Bites Still Problematic for Sea Otter Recovery
September 17, 2015