【記事】ラッコの養子の話 | A Sea Otter's Adorable Adoption Story

 本日はYouTubeのチャンネルIt's Okay To Be Smartの動画"Sea Otter's Adorable Adoption Story"の書き起こしをお届けいたします。代理母に育てられているラッコ696号の裏側のリポートです。

ジョー・ハンソン:ラッコはかわいくて、好奇心旺盛で、遊び好きで、かわいくて、賢くて、ふわふわしていて、あれ?かわいいっていいましたっけ?でも、ラッコはただかわいいだけの動物ではないのです。ラッコは、非常に重要な生態系の柱石でもあるのです。

ジョー:ラッコはケルプの森の庭師のようなものです。ラッコはウニやアワビのような海生の無脊椎動物を主なエサとしていますが、これらの無脊椎動物はケルプを食べるのです。ウニが多くなればケルプが少なくなります。ケルプは何百種もの生き物たちに、エサや棲家を与えているのです。

ジョー:20世紀以前、ラッコはほぼ絶滅寸前まで乱獲されてしまいました。そしてケルプの森がなくなり、日本からメキシコにかけての太平洋沿岸の生態系は脅かされてしまいました。何十年にもわたる保護の努力の甲斐あって、ラッコの個体数はわずか50頭から数千まで回復しました。

ジョー:ハンナ、あなたは水族館で一番いい仕事をしているんじゃないですか?

 

ハンナ・バン=ワイス:まったくそのとおりですね!シーオター・アクアリスト(水族館のラッコ担当)というのが私の正式な職名になります。つまり、水族館でラッコに関することは何でもするということです。

 

ジョー:それでお給料をもらっている、と。

 

ハンナ:はい、お給料をもらっています。まだ信じられないです。

 

ジョー:もしアシスタントが必要なら、この男はどうですか?

ジョー:ラッコは食べるのが大好きで、1日に体重の4分の1を食べます。他の海洋性哺乳類とは異なり、ラッコには脂肪層がありません。ラッコは体温を維持を、その非常に高い代謝に頼っているのです。

ハンナ:この展示水槽にいるラッコたちには、少なくとも1日に5回エサを与えています。そのほか、このようなおやつを与えています。1頭のラッコだけで、実際、エサ代だけで年間16,000ドル(約192万円)かかります。実は非常に飼育にはお金がかかるのです。展示水槽では、殻付きのエサを与えることはできません。自然な行動として、ラッコたちは窓に打ち付けてしまうからです。その代わり、氷の中に海老を入れたのを与えますが、これはラッコたちの好物です。ラッコたちは窓のところにいって打ちつけ、中のエサを取り出すのです。

ハンナ:ラッコは非常に冷たい海に住んでいますが、アザラシやアシカのような脂肪層を持っていません。ラッコは実は、非常に厚い体毛を持っているのです。身体には、1平方インチ当たり100万本もの体毛が生えています。私たちの頭にあるのと同じくらいの毛が、わずか1平方インチに生えているのです。お分かりの通り、この体毛が保温の役割を果たします。

ジョー:ラッコはずっとここに住むのですか?

 

ハンナ:そうです。展示水槽にいるラッコたちは、ずっとここで暮らします。みんな、赤ちゃんの頃、なんらかの事情で母親とはぐれ、他のオプションがなかったのです。しかし、みんな重要な役割を担っています。今、そのうちの1頭が裏で赤ちゃんラッコを育てています。この赤ちゃんは自然に返す予定です。

カール・メイヤー(アニマル・ケア・コーディネーター):歴史的には、80年代、90年代、私たちにとって親とはぐれた赤ちゃんラッコをうまく育て、野性に返すことが非常に難しい時代でした。生かすことはできても、野生に返す時には人間に慣れすぎてしまっていたのです。その原因は、人間が基本的に赤ちゃんラッコの母親の役割をしていたからです。2001年に、実験的に、人間の替わりにメスのラッコに代理母として同じ役割をさせるということを始めました。

ジョー:この赤ちゃんたちは、このラッコたちが生んだ子どもではないですが、自分の子どもとして養子にするということですか?


カール:ええ、本当にすごいことだと思います。最初、メスのラッコは赤ちゃんを抱いておなかの上に乗せ、あちこち連れまわして赤ちゃんラッコのグルーミングに進みます。よく見る行動で非常に大切なのは、食べ物を分け与えることです。潜ってエサをとりに行き、水面に戻ってきて赤ちゃんに食べ物を渡すのです。

マイク・マリー博士(獣医サービス・ディレクター):私たちは、展示しているラッコたちが生まれもって持つ、母親としての行動を活用しているのです。親のない赤ちゃんラッコがおり、その赤ちゃんはラッコとして生きていくのに必要なスキルを学ばなければなりません。特に、正しいグルーミング方法、エサの採り方、硬い殻の中にある身を取り出す方法、こういった生活のため必要なスキルをメスのラッコが赤ちゃんに与えてくれることを期待しています。そうして、赤ちゃんは海へ出て、本当の世界で生き延びていくことができるのです。

ジョー:本当に興味深い生き物だなぁ!この部屋では何が行なわれているのでしょうか。

 

マイク:このラッコは696号です。親とはぐれた赤ちゃんとしてここへ連れてこられ、飼育されているメスのラッコに養子として受け入れてもらいました。今日はこの子にとっては非常にストレスの多い日です。親離れする日です。このラッコに鎮静剤を打ち、健康診断をします。見た目と同じように、中身も健康かどうか確かめるんです。

 

マイク:44.5、犬歯6.8...6.9。

 

ジョー:すごい!

マイク:血液もみます。かなりしっかり血液のサンプルを取ります。安定同位体を測るためにヒゲも何本か抜きます。毛も抜いて、ストレスホルモンを調べます。そして、標本の多くはライブラリに行きます。将来、3年後、5年後、10年後に私たちが保存した2015年のラッコの状態が必要な研究者がいるかもしれません。

ジョー:僕の人生で触ったものの中で、一番柔らかい!かわいいなぁ。密な毛で覆われていない部分はわずかしかありませんが、これはそんな部分のひとつです。すごく暖かい。この足から、体温が伝わってくるのが分かります。すごい!

 

ジョー:えっと、このラッコは健康ということですか?

 

マイク:即答はできないけど、何かが悪いという兆候は見られませんでしたね。

カール:このラッコは、最終的には野生に返されます。ラッコを扱うのは、実際網で捕まえる時と、それから代理母と別れて健康診断をするときです。それ以外のときは、人間の形やにおいを隠すため、ラテックスの手袋とフード、ケープを使います。

ジョー:ラッコたちが人間に慣れないようにするのは本当に重要なんですね。このラッコたちは野生の動物であり、自然に帰った後もそのようにいて欲しいからなんですね。


マイク:その通りです。はっきり言うと、人間を好きになって欲しくないのです。人間とエサを関連付けて欲しくないのです。野生に帰りラッコとして生きるとき、人間を好きになることになんの有利な点もないのです。


ジョー:このラッコは、野生の動物になるための方法を学んでいる最中なんだ。うまく自然に帰れるといいですね。頑張れよ!

ジョー:696号の旅はまだ終わりにはほど遠いし、他のラッコたちのようにこのラッコの未来もはっきり分かりません。ラッコの生息数は一度にたくさん救えるというわけではないけれど、こうした研究者たちの懸命の努力により、将来よりよい生態系となるでしょう。

この素晴らしい動物について、たくさん学んでくれたかな。これからもいろんなものに興味をもってね!