【記事】ラッコの交通事故死と利害のもつれ | An otter dies crossing the street, and a bureaucratic tangle follows

本日は2016年7月21日付のMonterey County Weeklyから、"An otter dies crossing the street, and a bureaucratic tangle follows. "をお届けします。
海水の侵入を防ぐ蓋がついたため土管を通れなって道路を渡るようになり、車にひかれてしまった名物ラッコ。しかし単純に土管を解放すればいいというわけにはいかないのです。ラッコの保護も大切ですし、そこで生活を営む人間、また別の危機に瀕する生物たちも同様に大切だからです。

デスバレー国立公園の山道で、車のヘッドライトの真ん前をマウンテンライオンが横切ったのを見たことがあった。最初はそれが何か分からなかった。ちょっと見ただけなら、ロバかと思った。

 

最近モスランディング・ロードをラッコが横断しているiPhoneで撮影された動画を見たのだが、同じようなことが起こった。何か起こるのか想像は難くなかったが、最初見たとき大きいアライグマに見えた。次に小熊のように見えた。

 

しかしそれは、モスランディング・ハーバーからモロ・コホ湿地帯を日常的に行き来していたラッコだった。私が見た動画は、その湿地帯沿いに住んでいるジェイミー・ジェラッドとその夫のアンドリュー・ドーランが撮影したものだった。3歳の息子はそのラッコをディガー(穴掘り)と名付けた。いつも貝を掘って獲っていたからだ。別の地元民は近所のレストラン「ホール・エンチラーダ」にちなんでそのラッコをミスター・エンチラーダと呼び、また別の人はキャプテン・モスと呼んでいた。

 

そのラッコがどんな名前で呼ばれているかに関わらず、朝、昼、晩と好物の貝やブラッククラブ(カニ)を食べ、いつも道路を渡る様子をみているうちに、ジェラッドとドーランにとってそのラッコは家族や友人のような存在になっていった。

 

夫婦は「ラッコ横断中」という標識をアマゾンで15ドルで購入し、古いフェンスに取り付けてドライバーたちに注意を喚起した。ラッコが道路を渡ろうとするときには道路に走り出て、手を上げて車の往来を止め、ラッコを守った。「車を止めようとしない人もいました」とジェラッドは言う。「本当に怖かった」

夫婦が取り付けてくれた標識。奥の水に浮かんでエサを食べているのがミスター・エンチラーダ。
夫婦が取り付けてくれた標識。奥の水に浮かんでエサを食べているのがミスター・エンチラーダ。

昨年の春にこの家に越してきてから、ジェラッドとドーランはそのラッコが横断する時のガードマンになった。7月4日の独立記念日の連休に家を空ける準備をしていた時、あのラッコは大丈夫じゃないかもしれないと感じた。

 

夫婦は家に戻ってきてそのラッコが車にひかれて死んだことを知った。「あのラッコの死の責任は私たちにあるんじゃないかと感じました」とジェラッドは言う。

 

実際、ラッコを守る責任は地元、州、国などの複数の組織にある。ラッコは絶滅危惧種だからだ。モントレーベイ水族館、郡水源局、モントレー郡市民活動、アメリカ魚類野生生物局、モス・ランディング港湾局など様々な組織の代表が、なぜこのラッコが死ぬことになってしまったのかまずは現場検証し、将来的にこうしたラッコとの衝突事故と防ぐ方法がないか、また何故ラッコが道路を渡るのかという単純な謎の答えを探そうとしていた。

 

その答えは、過去と現在、農業や現代的な開発、淡水と海水、利益をめぐる競争、そうしたものが複雑に絡み合ったものから出さねばならない。

 

ラッコは潮位が低い時には土管を通ってモス・ランディング・ロードの下を横断することができるが、潮位が高くなると港からモロ・コホ湿地帯へ海水が流れ込むのを防ぐための防潮門が閉じてしまうため、戻ろうとするには道路を横断するしかなくなってしまうのだ。

 

モントレー郡水源局のアソシエイト・エンジニアであるマーク・フォクスワージーは、1850年代ごろからもそうだったし、毛皮貿易でラッコが一掃される前も、ここに港が造成される前もそうだったという。

 

この防潮門は、もとはといえばモロ・コホ湿地帯周辺に住む農家がこの湿地帯に海水が入ることを望まなかったために機能していたものだった。

 

今や、ラッコが道路を渡ることについて人々が騒ぎ立てている。その中には「エルクホーン湿地帯の友人、アーティスト、隣人」という団体も含まれ、その代理人はそもそも湿地帯へのアクセスを防いでしまった防潮門のフタについてや、3つの団体による3年に渡る許可が合法的なものなのかどうか厳しい質問を投げかけている。(フォクスワージーが海水が漏れてしまう防潮門の長期的な修理の許可を申請する際、少なくとも6つの団体が署名する必要があると考えている)

 

現在、他の保護の必要性がある生物(汽水域に住む巻貝の仲間や潮水域に住むハゼの仲間など)が防潮門の湿地帯側に生息しており、過度に海水が流れ込むとそれらの生物が危機に瀕してしまう。

 

ハゼの仲間は灰色の模様がある透明な魚で、体長は5センチほどだ。その魚は特に魅力的ともいえないし、何か関連性があるともいえない。しかし、ラッコと同様、その魚も危機に瀕しているのだ。

Monterey County Weekly

An otter dies crossing the street, and a bureaucratic tangle follows.

Sara Rubin July 21 2016