【記事】エルフィンと歩んだ日々 | ALONG CAME ELFIN

本日は、2017年3月29日付のVancouver Aquarium Aquablogから、"ALONG CAME ELFIN"をお届けします。2年前、史上初のラッコの腎臓摘出手術の際、初めてラッコ間による輸血が行われましたが、その時血液を提供してくれたのがエルフィンでした(参考)。人間だけでなく、動物にも積極的な治療よりも、疼痛治療やQOL(生活の質)の向上を考えるようになったようです。

2001年10月、幼いうちにバンクーバー水族館海洋海洋科学センターにやってきた時から、ラッコのエルフィンはまるで自分の毛皮のようにスタッフのジャケットを前足でこすり、息を吹き込んで「グルーミング」し、スタッフらの心をにわかに射止めました。エルフィンの魅力は、16年の間同じようにエルフィンがエンリッチメントのおもちゃで一生懸命遊んだり、氷のおやつを堪能したり、何でもにおいをかいだりする様子を見てきた職員やボランティア、会員、来場者にに広がりました。

 

こうしたことは、家族同様の水族館関係者にとって、来るべきエルフィンとの別れを一層辛いものにしています。昨年定期健診の際、水族館の獣医師チームはエルフィンにリンパ節肥大を見つけ、生体組織検査の結果とリンパ腫(癌の一種)であることが判明しました。健診に引き続き、獣医師長のマーティン・ハウリナ博士は世界中の動物腫瘍学者と相談し、治療計画を作り上げてきました。エルフィンは化学療法によく反応し、1年以上の間、それまで同様食べたり仲間と遊んだりしてきました。ごく最近、体調の変化を受けて獣医師チームはエルフィンの治療を終末医療へと変更し、エルフィンの残された日々が極力幸せで居心地のよいものになるようにすることにしました。

初めてバンクーバー水族館へ到着した時のエルフィン
初めてバンクーバー水族館へ到着した時のエルフィン

「エルフィンの寿命は私たちが予測していたものを超えています」ハウリナ博士によると、オスのラッコの寿命野生では10年から15年です。「このライフステージにおけるエルフィンのケアの経験は、私たちに重要な知識をもたらしてくれます。私たちの経験を世界の仲間たちと分かち合うことで、ここだけでなく、世界中の保護リハビリ施設の年配のラッコたちに必要なケアへの理解をより深めることができるでしょう」

 

この変わり目は辛いものではありますが、当水族館のチームは素敵な思い出を思い出し、エルフィンと過ごす時間をいつくしみ、世界に誇るケアを与えることで前向きになっています。

エルフィンは到着した時から海獣トレーナーらの心を射止めてきた
エルフィンは到着した時から海獣トレーナーらの心を射止めてきた

エルフィンは2001年7月、アラスカ州ジュノーでひとりぼっちでいることろを漁師に発見され保護されました。生まれたばかりの子どもを母親が長い間置き去りにすることはほとんどないため、その漁師は母親が戻ってくるかもしれないと何時間も見守っていました。結局母親は現れず、エルフィンはアラスカシーライフセンターへ連れられていきました。当時エルフィンは体重が3ポンド(約1.35kg)もなく、生後2~3日であると思われました。3か月後、エルフィンはバンクーバー水族館へ移り、引き続き24時間体制のケアを受けました。エルフィンは生きるために必要なスキルを学ぶための時間を母親と十分に過ごしていなかったため、アメリカ魚類野生生物局から野生に返すことができないと判定され、バンクーバー水族館がエルフィンの家となりました。

 

野生では、ラッコは多くの困難に直面します。生まれてから6か月間、ラッコは母親に食べ物を大きく依存しています。したがって、母親がいなければ生きることができません。母親のエネルギーの殆どが子どものために費やされ、その結果子どもにエサを与えている間母親の健康状態は悪くなっていくことあります。メスのラッコは毎年子どもを産むため、環境的な要因やエサの入手の可能性如何により、その母親が翌年より良い条件で子どもを育てられると考えた場合は、自立できるようになる前に子どもを捨ててしまうことがあるのです。成獣になってからも、ラッコは病気や原油流出、捕食、漁業との交渉、乱獲などの脅威と直面しています。

お気に入りのエンリッチメントのおもちゃを持ったエルフィン
お気に入りのエンリッチメントのおもちゃを持ったエルフィン

世界のラッコの90%はアラスカ沿岸に住んでいます。アラスカ州内では、南東および中央南部の個体群は安定的もしくは増加しています。南西部の個体群は、シャチの捕食が増加したため、過去20年以上個体数が急減しており、絶滅に瀕する種の保存に関する法律で絶滅危惧種に挙げられています。カナダのブリティッシュコロンビア州では、ラッコはバンクーバー島西岸や中央沿岸部のベラベラ付近で見ることができます。ブリティッシュコロンビアのラッコの個体群は絶滅の危機に瀕するカナダの野生生物の現状に関する委員会およびブリティッシュコロンビア州野生生物法により、2007年4月に「懸念種」へ格下げになっています。ラッコは、カナダ漁業法およびブリティッシュコロンビア州野生生物法により保護されています。

 

エルフィンは、タヌ、カトマイ、マック、クニク、リアルトと同じようにラッコ大使となりました。そのふかふかな顔と遊び好きの性格で来場者の心を射止め、その保護の物語やラッコが直面する問題、そして一番重要な、私たちがどうすればラッコを守る手助けができるかということについて、人々の好奇心を喚起させているのです。

Vancouver Aquarium Aquablog

ALONG CAME ELFIN

March29, 2017