【記事】ラッコに再び命を吹き込む | An Old Sea Otter’s Final Dive

本日は2017年7月4日付のHakai Magazineより、"An Old Sea Otter’s Final Dive"をお届けします。死んでしまったラッコに再び命を吹き込む、あるラッコ生物学者のお話です。

ラッコの骨格を再構成し、再び命を吹き込む

骨格標本にはそれぞれ、固有の物語がある。2016年の6月末、ラッコの死体が思いがけず浜に打ちあがってハカイの研究者らはざわめいた。

 

「ブリティッシュコロンビア公園局がセブンスビーチにラッコの死体があると教えてくれたのです」とハカイ研究所の研究員、エリン・レヒシュタイナーは言う。レヒシュタイナーは研究所付近の海でラッコをモニターしており、その死んだばかりのラッコがセブンスビーチ沖でいつも泳いでいた大きなオスのラッコだったということに気が付いた。

 

仲間の科学者とハカイのスタッフを呼び、平たんでない4キロ以上の道を90パウンド(40kg)のラッコを担いで研究ステーションに戻った。レヒシュタイナーと研究仲間は、その死体が検死(動物の死後解剖*)を受けるための準備を行い、注意深く骨を取り除いた。

 

レヒシュタイナーはその骨格をどこに送ればいいかわかっていた。マイク・デルース。マイクはラッコが打ちあがった時にはキャルバート島にはいなかったが、ハカイ研究所でパートタイムのラッコ生物学者として働いていた。彼はまた偶然にも、世界に名だたる海洋哺乳類の骨格標本を組み立てる専門家だった。

 

マイクが再構成した印象深い骨格標本は世界中に展示されている。バンクーバーにあるビーティ生物多様性博物館に掛かっている、26メートルのシロナガスクジラの骨格標本もそうだ。マイクは最近ロンドンの有名な自然史博物館に展示されている別のシロナガスクジラの骨格も組み立てた。

 

「少し、芸術的な感覚が必要です。たいていは、その動物が自然にいた時と全く同じに見えるよう組み立てます。そうした動物たちが何か本当に興味深いことをしているように見せたいのです。人々が見た時、その動物が活動的でその環境の他のものと相互に影響しあっていると、よりパワフルに見えるからです」とデルースは言う。

 

150時間、細心の注意を払ってラッコの骨格を再構成し、ハカイ研究所は最新の潜るラッコの骨格をキャルバート島のメインロッジの吹き抜けに展示している。この展示はラッコだけではない。そのラッコは前足の間に、ラッコの大好物のエサ、巨大な赤ウニの骨のような殻を抱えている。

 

「とても目立って見えますね」とデルースは言う。「みんな、自分のご飯を食べながら、そのラッコがエサをとっているところを同時に見られるのです」

 

*ラッコはカナダの絶滅危惧種法で特別懸念種に指定されている。このラッコはカナダ水産海洋省の許可証RR 16-0247のもと、訓練を受けた専門家が取り扱っている。

 

前回のハカイブログ(【記事】ラッコは情報の宝庫 | A Furry Treasure Trove of Information)で、このラッコについて詳しく書いています。

【動画の書き起こし】

マイク・デルース(骨格構成専門家):この年老いたラッコはー大きなオスのラッコでしたがー、繁殖期を過ぎて、セブンスビーチ近くに住もうと決め、大きなウニを食べていました。このラッコは昨年の夏、セブンスビーチに打ちあがって死んでおり、公園管理局が発見しました。そこで、みんなでそこへ行き死体を回収しハカイへ運びました。彼らが毛皮を剥がし、その残りを私が引き受けました。

 

私はマイク・デルースです。骨格を組み立てて元に戻しています。私たちはこの骨格をメインロッジの吹き抜けに展示しようと考えています。みんながご飯を食べながら、このラッコがディナーをとるところを同時に見られるというのは素晴らしいことでしょう。

 

私がまずやることは、自然の生息域にいるその動物を研究し、何をしているか知ることです。私は15年以上ラッコを観察しています。

 

たぶん、芸術的なセンスがちょっと必要だと思います。私は不自然な体形やその動物が本来しないような形にはしたくないのです。動物たちが何か本当に興味深い行動をしているのを見せたいのです。その動物がアクティブにその環境の他のものと関係している様子は本当にパワフルです。

 

どの骨格にもその動物の人生があります。このラッコは高齢のオスで、歯が折れていて、本当に感染していました。歯槽が感染してしまっていて、それが死因になったようです。

 

組み立てるのが難しいパーツがたくさんあり、それに6週間のうちかなりの時間を費やしました。本当に根気強さが必要です。急ぐと、組み立てたものが正しく見えないのです。おそらく一番時間がかかったのは、前足の骨です。前足の内側の骨は本当に小さくて見えにくいです。

 

これは私が組み立てた3頭目のラッコです。一番最初のラッコは死んだラッコのようでした。二番目のラッコはもう少し命が吹き込まれていましたが、このラッコは間違いなく、私が見たなかで一番ダイナミックなラッコだと思います。

 

こうした動物やこのラッコの生活を覗く、めったにない機会だと思います。骨もすごいと思いますね。

Hakai Magazine

An Old Sea Otter’s Final Dive

July 4, 2017