【記事】エルクホーン湿地帯のラッコ研究 | Studying Sea otters at Elkhorn Slough

久しぶりの投稿となります。2017年8月6日付のVoices for Biodiversityより、"Studying Sea otters at Elkhorn Slough"をお届けします。エルクホーン湿地帯にラッコが戻ってきてから劇的な環境の変化が起こりました。

エルクホーン湿地帯のラッコ
エルクホーン湿地帯のラッコ

私はエルクホーン・スルー・エスチュアリン・リサーチ・リザーブ(ESNERR)のリサーチコーディネーター、クリスティン・ワトソンとヤンパ・ヒルの上に立った。潮の満ち引きのある大きな川が湿地帯の草の中をうねり、その支流がここそこに広がり、水たまりを作り青い空を映している。

 

私たちが立っているところから、ワッソンが長い恋色をしたラッコたちを指さした。丘の上から見える数頭のラッコたちは、寝たりグルーミングをしたりと河口域の中の守られた水域を活用しているようだった。実際、世界中の人々がエルクホーン湿地帯のウエブサイトにあるライブカメラでラッコたちをみることができる。

 

数年前、この湿地帯と港に住むラッコたちはー現在は100頭を超えるがー比較的研究されていなかった。今日、ここに生息するラッコたちはカリフォルニアラッコの個体群の5%を占め、沿岸部で最も個体密度が高くなっている。エルクホーン湿地帯再構築イニシアチブのためボランティアでモニターをする際、ロン・イービーは私が立っていたまさにその場所に立っていた。市民科学者として、イービーは再構築工事により影響を受ける可能性のある種を観察していたのだ。調査の間、イービーはこの湿地帯に多くのラッコが生息し、常に見られることに驚き、それについてエルクホーン湿地帯のスタッフに話していた。

 

ESNERRにおける最初のモニタリングで、私は河口域の流れが太平洋にそそぐ場所の近くであるモスランディング・ハーバーでイービーに会った。イービーは私たちをボートに乗せ、安全に近くで湿地帯の中で暮らす野生生物を見ることができるツアーに連れていってくれた。無数の鳥たちが水面に浮かんだり、木の杭の上に立ったりしていた。ゼニガタアザラシが砂洲で休み、水の中に滑り込んだり波を被ったりして頭を水から突き出していた。ヨットハーバーのドックには様々な色に日焼けしたアシカが吠えながらイワシのようにお互いに重なり、昼寝をしていた。そしてもちろん、ラッコも見つけた。

ラッコは海洋哺乳類で一生の間波間に潜り虫や甲殻類、アワビ、ウニなどを潜ってとりながら海水の中で暮らす。仰向けになり手で食べ物を巧みに食べる様子は人々を魅了してきた。例えば、ラッコのキャラクターは10億ドルを売り上げたファインディング・ドリーという映画の中でも瞬く間に大人気になった。

 

私はニヤニヤが止まらなかった。ラッコの群れが港と海の間にある陸地の影に集まり、風をしのいでいた。他のラッコたちはエサを取っていた。ユムシを持ってボートのすぐ前に突然顔を出し、流れにゆっくり乗ってエサを食べていた。

 

イービーや他の市民科学者らの観察に影響され、エルクホーン湿地帯の協働チームが複数年にわたるラッコの調査に乗り出した。これはボランティアやスタッフによる通常のモニターを含むものだ。獣医師らは、無線装置と温度計測器を取り付けた約20頭のラッコたちの健康診断を行った。これにより、リアルタイムでラッコたちの動きがわかるのだ。

 

エルクホーン湿地帯の研究者やボランティアは元気でエサを食べる時間が少なく、陸に上がってリラックスしている湿地帯のラッコたちの記録を行った。

エルクホーン湿地帯はこのアザラシを含む多様な野生生物の生息地となっている
エルクホーン湿地帯はこのアザラシを含む多様な野生生物の生息地となっている

エルクホーン湿地帯の科学者らは最近新しい結論を導き出した。ラッコがアマモの成長を促すということだ。どうやって?ヒュー他による論文はこう説明している。「海草から藻類を取り除く草食生物はラッコによるカニの捕食に恩恵を受けている。こうして頂点捕食者が復活すれば、沿岸の植生が繁茂する生態系の復活を支えるのだ」簡単に言えば、ラッコがカニを食べ、それにより藻類を食べる生物が海草で生き残ることができる。そして藻類が少なくなれば、海草はよく育ち、新たな場所へと広がっていくことができるのだ。

 

西海岸に到達した際、入植者たちはラッコを一掃しほぼ絶滅状態まで追い込んだ。1930年代までに約50頭のラッコがビッグ・サー付近にとどまっていたが、それは険しい崖沿いにある海で猟師による危険を回避できる場所を安全だと分かったからだった。ラッコ猟が法により禁止されてはじめてラッコの個体数は回復することになった。

 

ラッコが塩生湿地帯と強く関わっていることを発見できたのは、2つの意味で記念すべきことだ。一つはラッコを湿地帯や河口域に生息する動物として再イメージをすることにより、私たちが「普通」だと思い込んでいた外洋での行動に関して新しい考え方をもたらしてくれたが、それは実際は人間による圧力の結果だった。より多くのラッコが河口域へ来るだろうか?ラッコに関する疑問が浮かび上がるに伴い、エルクホーン湿地帯のスタッフは調査を継続することになるだろう。

 

二つめに、市民科学者がこの研究において重要な役割を果たしたということだ。献身的なボランティアたちがラッコの存在に気づき、複数年にわたる研究の間モニタリングチームの一員となった。ラッコに対し勤勉で献身的な彼らは今日の生態学研究において市民科学者が非常に重要であることを体現している。

 

この短い旅から私はイービーがラッコの研究をするのが好きで、エルクホーン湿地帯の中で調査するのが好きなことが見て取れた。鳥やラッコからアザラシやアシカに至るまで、観察や研究の可能性は無限大だ。

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Voices for Biodiversity

Studying Sea otters at Elkhorn Slough

August 6, 2017