【記事】カリフォルニアラッコ復活への危険な道のり | Sea otters’ perilous path to recovery

本日は2018年3月16日付のConservation & Science at Monterey Bay Aquariumより、"Sea otters’ perilous path to recovery"をお届けします。
数が順調に増えているアラスカやワシントンに比べてカリフォルニアのラッコは様々な条件から増加率は鈍いままです。長年のラッコ調査は、今後の保全活動の支えになるでしょう。

モントレーベイ水族館は30年以上、カリフォルニアにおけるラッコの回復に中心となって貢献してきた。水族館の研究員や政策専門家は高度な科学的知識を持ち、改善した管理を推進し、健全な沿岸生態系に貢献するラッコについて啓蒙を一般の人々に対して行ってきた。エコグラフィー誌に掲載された新しい論文は、カリフォルニア沿岸のケルプの希薄化と最近増加しているホホジロザメによるラッコの死の関連性を立証するため当館が30年にわたり行ってきた研究から導き出されたものだ。発見できたのは、ラッコの回復に携わってきた人々に対して新たな問題を提示した。ラッコはホホジロザメという試練を受けても人間の助けを得ることなく歴史的な生息域に戻ることができるのか。保全調査スタッフのアシーナ・コペンハーバーはそうした挑戦を探っている。

 

上席調査生物学者のテリ・ニコルソンは指折り数えながらなじみのない名前を列挙した。ジグ、ゴルディ、ヘイリー、ミルクドゥド、、

展示ラッコのローザは裏で代理母として座礁したラッコの子どもを育てるという重要な役割を果たしている。
展示ラッコのローザは裏で代理母として座礁したラッコの子どもを育てるという重要な役割を果たしている。

ペットの名前のように聞こえるが、テリは1984年にモントレーベイ水族館へ運び込まれた座礁したカリフォルニアラッコの子どもの名前を思い出していたのだ。

 

当時、テリも同僚たちも知らなかったが、この最初の4頭の親を失ったラッコはラッコ研究の先駆けとなるデータとなり、これまでの当館の研究に役立っている。

 

その研究は最近エコロジー誌に発表されたが、1984年から2015年までの725頭の生きた座礁ラッコから集めた情報をもとに、健康なケルプの森とラッコの個体群回復、サメによるラッコの死の重大な関係を浮かび上がらせている。

水族館が保護し育てたラッコは野生のラッコの回復に貢献している。Photo © Sea Studios Foundation
水族館が保護し育てたラッコは野生のラッコの回復に貢献している。Photo © Sea Studios Foundation

「座礁したラッコを保護しリハビリを行うことで、兆候を知り、ラッコが座礁する原因を特定できるのです」とテリは説明する。「そしてまた、ラッコがこれまで直面してきた脅威のパターンを探すことができるということなのです」

 

当館のラッコ調査チームは政府機関や協力研究機関と密接に働き、死んでしまったラッコも回収している。浜に打ち上げられたラッコの死体は研究者にとって貴重だ。死後解剖から分かる情報が個々のラッコの一生の物語の一つ一つを繋ぐだけでなく、ラッコという種全体として直面している問題をもつなぐことができるからだ。

 

「また、死体が新しければ、病理学者や獣医がー数年後になってもー当時の海の状態を知るために、標本組織を調べることができるのです」とテリは言う。

 

2000年代初め、当館が斬新なラッコの代理母プログラムを始めた頃、テリは同僚らとともに、生きたまま座礁していたラッコたちにはっきりとしたデータがあることを確信した。

 

「すべてのデータを見て、驚きで吹き飛ぶほどでした」とテリは言う。

研究が明らかにしたもの

19世紀の終わりまでに、毛皮貿易商は太平洋沿岸にいた15万頭から30万頭と推測されるラッコのほとんどを殺してしまった。 Photo courtesy University of British Columbia
19世紀の終わりまでに、毛皮貿易商は太平洋沿岸にいた15万頭から30万頭と推測されるラッコのほとんどを殺してしまった。 Photo courtesy University of British Columbia

テリのチームは、時代を経につれ人間に関連した脅威が劇的に減り、現在は全ての座礁の中で5パーセント未満にすぎないことを明らかにした。

 

「150年前はそうではありませんでした」研究の共同執筆者でラッコの調査コーディネーターであるミシェル・ステッドラーが言う。「18世紀と19世紀では、ラッコにとって最大の脅威は毛皮貿易のために人間に狩られることでした」

 

商業猟が始まる前、太平洋沿岸のラッコの個体数は15万頭から30万頭だったと推測されている。20世紀初めには、僅か数千頭が生き残っているだけだった。カリフォルニアでは、1930年代にビッグサーの海岸の人里離れた場所で小さな群れが見つかるまでは、ラッコは絶滅したと考えられていた。

 

しかし、他の脅威、例えば、捕食者や食糧の枯渇などはどうだろう。

現在の生息域では、食料供給可能量がラッコの個体群の成長を阻んでいる。Photo by Neil Fisher
現在の生息域では、食料供給可能量がラッコの個体群の成長を阻んでいる。Photo by Neil Fisher

カリフォルニアでラッコの生息域の中心となっているところでは、ラッコの個体数の成長は食糧供給可能量により大きく制限されており、座礁したラッコの63パーセントが過密に強い缶れkk製を示している。ラッコの個体数が増加しても、地理的な生息域があまり広がっていないことからそのように考えている。

 

しかし10年前の調査員は、ラッコが将来別の困難に直面するとは考えもしなかった。

新たな脅威

「ホホジロザメによる噛みつきがラッコの生息域の両端における問題の大部分を占めています」とミシェルは言う。「また、生息域の真ん中でも同様に、サメの噛みつきによる座礁が増え端得ています」

当館の研究員はラッコの生息域周辺部、特にサンタクルーズの北側とコンセプション岬の南側においてケルプキャノピー(訳者注:オオウキモなどの大型海藻が水面に達するまで成長しているもの)の不在が著しく、ラッコの繁殖や生き残りを阻んでいると結論づけた。

 

ケルプキャノピーがなければ、特に出産期のメスとその子どもはサメの噛みつきに対し非常に危うくなる。複数の問題が外洋から沿岸近海までそうしたサメの捕食行動の変化に繁栄している。

 

それなら、どの程度ケルプがあればいいのだろうか。研究結果によれば、沿岸生息域に少なくとも10パーセントのケルプキャノピーがあればラッコをかなり保護することができる。しかし、ケルプが多ければそれにこしたことはない。

ケルプキャノピーの減少

カリフォルニア中央沿岸部のケルプのカバー率は近年減少しているが、これは2013年におこったヒトデ消耗性疾患の大流行と強い関連性がある。こでは、ウニを食べるヒトデが弱り死んでしまたことが原因となった。主要な捕食者がいなくなり、ウニの数が急増した。ウニの数が制限されなくなり、ウニは大量のケルプを勢いよく食べ、以前は繁茂していたケルプの森をひどい「磯焼け」の状態にしてしまいます」

「ウニを大量に食べられるのはラッコだけです」とテリは言う。「このような大規模な磯焼けの中では、ウニは栄養不足になり、ラッコには食欲をそそりません」

 

「ですから、ラッコはウニを食べてケルプの成長を推し進めることができますが、ラッコが生きていくのに適切ではない場所でケルプの成長を促すことはできないのです」とテリは言う。

 

こうしたことが分かると、新たな疑問が浮かぶ。人間の手助けなしに、ラッコは歴史的な生息域に拡大することができるのだろうか。そして、現在の生息域の限界を超えていくとしたら、好奇心旺盛で腹をすかしたサメから身を守るのに十分なケルプはあるのだろうか。

生態系にはラッコが必要

「現在、カリフォルニアラッコは歴史的な生息域の25パーセントを占めているにすぎません」とテリは言う。「生息域はオレゴン州ニューポートからバハカリフォルニアのプンタ・アブレホスまで広がっていましたが、オレゴンやバハ・カリフォルニアまではまだ長い道のりです」

 

ラッコはケルプの森と沿岸の湿地帯において強力な生態系のエンジニアであるため、弾性のある沿岸生態系の構築は水族館の保全戦略の一部はラッコの回復に焦点を合わせていた。これには最終的にラッコを歴史的な生息域に広げる手伝いをするということも含まれている。当館の代理母プログラムは、親を失ったラッコを育てリリースするという例をみないプログラムであり、研究者たちはラッコを最も必要としている場所に放流することができる。近年、エルクホーン湿地帯はこうしたアプローチの恩恵を受けていることが分かり、湿地帯で暮らすラッコのおよそ60パーセントは水族館の代理母プログラムの出身、もしくはその子孫であることが分かった。

 

テリは、25年にわたるラッコの調査を思い起こし、手を組んで微笑む。

 

「人々は何年もの間私たちを見て『こんな座礁した動物を助けたところでなんの益があるんだ』と尋ねてきました」とテリは言う。「ラッコが再定着するのを助けることで、この仕事がラッコの個体群の役にやっているとついに言うことができるとようになりました。どうやって1世紀以上ラッコがいない場所へラッコを再導入できるかを新たに考える情報を与えるために、科学的で確かな礎を提供できる将来に対する見通しやデータ、プログラムがあるのです。

 

本当に、魅力的な仕事です」

Conservation & Science at Monterey Bay Aquarium

Sea otters’ perilous path to recovery

March 16, 2018