【記事】2018年カリフォルニアラッコ個体数調査 | California sea otter numbers take a slight dip from last year, but average count exceeds 3,090 for third consecutive year

本日は2018年9月25日付の米国魚類野生生物庁のウェブサイトより、"California sea otter numbers take a slight dip from last year, but average count exceeds 3,090 for third consecutive year”をお届けします。ラッコが絶滅危惧種でなくなることはよいことではありますが、最終的なリスト除外は種を守るためにも慎重に判断してほしいです。

カリフォルニア州サンタクルーズ-カリフォルニア州沖のカリフォルニアラッコの個体数は2016年をピークに減少しているが、個体数平均値は3年連続で3,090頭を超えた。米国魚類野生生物庁カリフォルニアラッコ回復計画によると、個体数平均値が3年連続で3,090を超えるとカリフォルニアラッコが絶滅に瀕する種の保存に関する法から除外されることが検討されることになる。

 

近年の個体数は減少しているものの、今年の個体数平均値はこの3年平均のしきい値に達している。

 

カリフォルニア州魚類野生生物局(CDFW)および米国地質調査所(USGS)が発表したデータによると、今年の平均値である3,128は2017年調査よりも58頭少ない。カリフォルニアラッコ(Enhydra lutris nereis)は1973年の絶滅に瀕する種の保存に関する法律により、絶滅危惧種に指定されている。

 

「このしきい値に達したことはカリフォルニアラッコにとって一つの道標ではありますが、カリフォルニアラッコに影響を与えているすべての要因を見直し、可能な限りの科学的な方法を用いて絶滅危惧種のリストから除外することが適切かどうか決定することが重要です」と米国魚類野生生物庁カリフォルニアラッコ回復コーディネーターのリリアン・カーズウェルは話す。「カリフォルニアラッコにとって、そうした要因は現在脅威となっているサメの噛みつきによる死や生息域拡大の不足、エサの変化などがあります」

 

部分的には、今年の個体数減少は本土の個体群の3年平均値2.2パーセントの減少に反映している。本土の個体群はサンマテオ郡のアニョヌエボ岬からサンタバーバラ郡のガビオタ州立ビーチの数キロメートル西まで広がっている。対照的にサンニコラス島のラッコの個体群は引き続き増加している。

 

「昨年海表まで達するケルプは非常に少なかったのですが、それに比べて今年は本土のラッコの生息域でケルプが豊富でした」とUSGS野生生物学者で毎年の生息域全域調査をコーディネートしているブライアン・ハットフィールドは言う。「これがラッコの分布に影響を及ぼし、カリフォルニアラッコ生息域中央部における個体数の高さに貢献しているのかもしれません」

 

CDFW、USGS及びモントレーベイ水族館の科学者らは、2011年を除き1980年代から毎年カリフォルニアラッコの生息域全域調査を行ってきた。2011年は悪天候のため、実地調査ができなかった。研究者らは毎年の個体数指数を計算し、個体群の傾向の評価を行い、米国魚類野生生物庁や他の資源機関にカリフォルニアラッコの豊度や分布に関する見識を提供している。

 

カリフォルニアラッコの本土の個体群は、当該種の生息域の中央であるシーサイドからカユコスまでが最も大きく、生息域南部に比べてやや増加している。しかし、一方で中央部の北では、ラッコの個体群は5年連続で減少傾向にある。生息域の端の変化はラッコの回復の長期的な見通しにとって、重要な意味を持っている。

 

「私たちは生息域北端と南端で、私たちは引き続きサメに噛まれたラッコを多く回収しています。これは豊度の減少が記録されているのと同じエリアになります」

 

カリフォルニア州本土のラッコの個体群に加え、USGSとパートナーらは南カリフォルニア湾のサンニコラス島でもラッコの調査を行っている。この個体群は、1980年代後半にそのエリアに再導入され定着したもので、1990年代を通じて個体数は低いままだった。しかし、ここ10年以上、サンニコラス島の個体群は年平均10%で休息に増大している。

 

このラッコの個体群調査と座礁プログラムは、ラッコや沿岸生態系における捕食者としてのラッコの役割を調べる、大きな調査プログラムのごく一部だ。「キーストーン種」として、ラッコは研究者らに太平洋の沿岸生態系の健全性に関する科学的な鍵を与えてくれる。この生態系は多様な種の命を支え、沿岸コミュニティに経済的なサポートを提供している。ラッコの個体群の脈動を測り続けることで、USGSの科学者らは、ラッコに適切な休息地やエサ場を与えてくれるケルプの森の生態系の変化をモニターする。USGSはまたCDFWやモントレーベイ水族館と協働し、ラッコ座礁ネットワークを運営している。こうして協働して行われてきた研究からわかったことが、ラッコの個体群を回復に導く効果的なマネジメントを支えているのだ。

調査方法

  • 年次個体数指数はカリフォルニア魚類野生生物局原油流出防止対応局、モントレーベイ水族館、米国地質調査所、カリフォルニア大学サンタクルーズ校、米国魚類野生生物庁、米国海洋エネルギー管理局の研究者、学生、ボランティアにより、陸からの望遠鏡による目視、カリフォルニア沿岸沿いの低空飛行の飛行機による目視により計算されている。
  • 今年調査が行われた沿岸は、サンマテオ郡のピラー岬から南はサンタバーバラ郡・ベンチュラ郡の堺のリンコン岬まで、およびサンニコラス島を含む。

ラッコに関して

  • ラッコは毛皮交易時代後、カリフォルニアでは絶滅していたと考えられていたが、1930年代に再発見された。約50頭がビッグサーのビクスビークリーク付近で生き延びていたと記録されている。
  • ラッコは岩礁間潮帯生態系のキーストーン種と考えられている。ラッコはウニを捕食するが、もしラッコがウニを食べなければウニがケルプ床を食べつくしてしまうからである。
  • 科学者らはまたラッコを沿岸生態系の健全性を示す指標として研究している。ラッコは沿岸近くでエサを食べて生活するため、沿岸陸部から流れ出す微生物毒素ミクロシスチンのような汚染物質や病原体に最初に晒される捕食者だからである。
  • 座礁したラッコを見つけた場合は、このウェブサイトに掲載されている団体に通報することになっている。

詳しい調査結果や地図、「2018年春カリフォルニアラッコ個体数調査結果」の完全なレポートはオンラインで見ることができる。

図1:カリフォルニアラッコのカリフォルニア本土中央沿岸部およびサンニコラス島における分布 2018年。
図1:カリフォルニアラッコのカリフォルニア本土中央沿岸部およびサンニコラス島における分布 2018年。
図2:生データの3年平均値に基づくカリフォルニアにおけるカリフォルニアラッコ(Enhydra lutris nereis)の個体数傾向。データは本土生息域(左軸)、サンニコラス島(右軸)及び2012年以降の全生息域における全個体数(実線)およびそのうちの成獣(幼獣ではないもの、破線)を示す。2012年以降個体数の合計が正式な個体数指数となった。
図2:生データの3年平均値に基づくカリフォルニアにおけるカリフォルニアラッコ(Enhydra lutris nereis)の個体数傾向。データは本土生息域(左軸)、サンニコラス島(右軸)及び2012年以降の全生息域における全個体数(実線)およびそのうちの成獣(幼獣ではないもの、破線)を示す。2012年以降個体数の合計が正式な個体数指数となった。
図3:カリフォルニア本土沿岸、カリフォルニア中央沿岸部およびサンニコラス島、南カリフォルニアにおけるカリフォルニアラッコ(Enhydra lutris nereis)の地域的傾向。生データ及び3年平均値(時間軸全体に現れている実線)が本土の北部、中央部、南部及びサンニコラス島に分けてプロットされている。最新の5年平均値(変化の年率の幾何平均として計算)がそれぞれの時間軸の最後に実線で示されている。
図3:カリフォルニア本土沿岸、カリフォルニア中央沿岸部およびサンニコラス島、南カリフォルニアにおけるカリフォルニアラッコ(Enhydra lutris nereis)の地域的傾向。生データ及び3年平均値(時間軸全体に現れている実線)が本土の北部、中央部、南部及びサンニコラス島に分けてプロットされている。最新の5年平均値(変化の年率の幾何平均として計算)がそれぞれの時間軸の最後に実線で示されている。
図4:カリフォルニア本土中央沿岸部におけるカリフォルニアラッコ(Enhydra lutris nereis)の地域ごとの個体密度のバリエーション(沿岸500メートルあたりのラッコの数)。サンニコラス島の空間的に明白な分析が現在おこなわれていないため、サンニコラス島のデータは示されていない。
図4:カリフォルニア本土中央沿岸部におけるカリフォルニアラッコ(Enhydra lutris nereis)の地域ごとの個体密度のバリエーション(沿岸500メートルあたりのラッコの数)。サンニコラス島の空間的に明白な分析が現在おこなわれていないため、サンニコラス島のデータは示されていない。
図5:カリフォルニア本土及び中央沿岸部沿いのカリフォルニアラッコラッコ(Enhydra lutris nereis)の地域的な個体数傾向。傾向は、海岸の各地点で最新の5年時系列に対数線形モデルを当てはめ推定された平均指数関数変化率log(λ)を計算し、10キロ移動平均を用いて空間的に平滑化したもの。 注:ロンポックの西岸沿いの高い傾向推定値(log(λ)が0.1より大きい)は、ラッコの個体密度が低い場所(過去5年間で平均6頭未満の水域)に対応しているため、解釈には注意を要する。豊度の絶対的な増加をわずかに
図5:カリフォルニア本土及び中央沿岸部沿いのカリフォルニアラッコラッコ(Enhydra lutris nereis)の地域的な個体数傾向。傾向は、海岸の各地点で最新の5年時系列に対数線形モデルを当てはめ推定された平均指数関数変化率log(λ)を計算し、10キロ移動平均を用いて空間的に平滑化したもの。 注:ロンポックの西岸沿いの高い傾向推定値(log(λ)が0.1より大きい)は、ラッコの個体密度が低い場所(過去5年間で平均6頭未満の水域)に対応しているため、解釈には注意を要する。豊度の絶対的な増加をわずかに
図6:カリフォルニアラッコ(Enhydra lutris nereis)のカリフォルニア本土沿岸及びカリフォルニア市中央部沿岸の生息域北端および南端("As The Otter Swims"[ATOS]スケールで定義されているもの)の時間経過によるバリエーション。1983年~2018年。ATOS値の増加は、生息域が拡大していることを意味している。
図6:カリフォルニアラッコ(Enhydra lutris nereis)のカリフォルニア本土沿岸及びカリフォルニア市中央部沿岸の生息域北端および南端("As The Otter Swims"[ATOS]スケールで定義されているもの)の時間経過によるバリエーション。1983年~2018年。ATOS値の増加は、生息域が拡大していることを意味している。