【記事】2019年カリフォルニアラッコ個体数調査 | Slight dip in California sea otter numbers, according to 2019 survey results

本日は2019年9月24日付のU.S. Fish and Wildlife News Releaseより、"Slight dip in California sea otter numbers, according to 2019 survey results"をお届けします。2019年春に行われたカリフォルニアラッコの個体数調査の結果がでました。2016年から18年までの3年間、絶滅危惧種法の「節滅危惧種」リストから除外される参考地である3090頭を超えていましたが、今年の3年平均値は3000頭を割り込みました。サメによる噛みつきが多い地域で個体数の減少が顕著になっているようです。

Resting otters

詳しい調査結果や地図、「2019年春カリフォルニアラッコ個体数調査結果」の完全なレポートはオンラインで見ることができる。

 

カリフォルニア州サンタクルーズーカリフォルニアラッコの個体数は直近においては2016年以降減少を続けている。カリフォルニア魚類野生生物局(CDWF)と米国地質調査所(USGS)によりリリースされたばかりのデータによると、3年平均の個体数指数は今年2,962と2018年の調査より166頭減少している。

 

カリフォルニアラッコは連邦法である絶滅に瀕する種の保存に関する法と海洋哺乳類保護法により保護されており、カリフォルニア州法では完全に保護すべき種に列されている。ラッコは沿岸海洋生態系において非常に重要な役割を果たしており、海洋健全性の指標動物であり、またケルプの森や海草棚など沿岸生態系のバランスを保つなど、沿岸生態系の重要な構成要素となっている。

 

今年の調査によると、ラッコの個体群はシーサイドからカユコスにかけての生息域中央でもっとも大きく、生息域のこの場所においては5年間増加傾向にある。ピジョンポイントからモントレー湾北部にかけて及びカユコスの南のほぼ全域の、サメに噛まれることによる死因が高いことで知られている場所が最も減少傾向が大きい。

 

「生息域中央で増加傾向が見られる理由となっていると思われることの一つは、近年ウニやムラサキガイなどラッコのエサの入手可能性が増えていることです」とカリフォルニア州魚類野生生物局の上席環境科学者マイク・ハリスは言う。

 

昨年の個体数は、個体数指数の3年平均値が3,090を超えたことを3年連続で示したという点で重要である。これは米国魚類野生生物庁(USFWS)が絶滅に瀕する種の保存に関する法律に基づいて絶滅危惧種のリストから除外することを検討するために策定した条件である。

 

米国魚類野生生物庁は現在、個体数の傾向、分布、人口動態、遺伝学、生息環境、脅威、保全対策など、ラッコに関する入手可能な科学的・商業的データを収集している。

 

米国魚類野生生物庁のカリフォルニアラッコ回復コーディネーターのリリアン・カースウェルは、「入手可能な最良のデータを徹底的に検証することで、野生のラッコの持続可能性に影響を与えるすべての要因をよりよく理解できるようになるでしょう」とし、「この注目に値する海洋哺乳類は、サメの噛みつきによる死亡率のように、歴史的に繁栄してきた地域への拡大を制限する障害に直面し続けています」と述べた。

 

カリフォルニア州魚類野生生物局、米国地質調査所、モントレーベイ水族館の科学者らは、1980年以降毎年カリフォルニアラッコの生息範囲全体の個体数調査を実施してきた。研究者らは年間の個体数指数を計算し個体数の傾向を評価することで、米国魚類野生生物庁や他の資源機関に、ラッコの個体数と分布に関する見通しを提供している。

 

サンマテオ郡のポイント・アニョヌエボからサンタ・バーバラ郡のガビオタ州立ビーチまでわたるカリフォルニア本土沿岸のラッコの個体群に加えて、米国地質調査所とそのパートナーは南カリフォルニア湾のサンニコラス島でラッコを調査している。1980年後半にラッコを再びこの地域に導入作られたされたこの個体群は、1990年代を通じて数が少なかった。しかし、この10年間に個体数は年平均約10%の割合で急増した。

 

本土域とサンニコラス島の個体数を含む地域全体の指数の五年間平均傾向は、年率0.12%で横ばいであった。北部の範囲は、前年(2018)の範囲よりも北の地域を調査するために必要な調査資源に制限があるため、計算されなかった。しかし、南部の生息範囲は0.5キロメートルとわずかに拡大した。この地域ではラッコの数がごくわずかしか増えていない(年率0.55%の成長)が、これは南部周辺における有意な生息範囲拡大が見られないことを示している。

 

米国地質調査所の野生生物生物学者であるブライアン・ハットフィールド氏は、「今年は2年前よりも良好な観測条件で調査が行われたにもかかわらず、今年は本土沿岸のラッコの生の総数が減少しています」と述べた。

 

ラッコの調査と座礁プログラムは、ラッコと沿岸生態系における捕食者としての役割を調査する大規模な研究プログラムの一部である。米国地質調査所の研究者たちは、ラッコに適切な休息と摂食の環境を提供するケルプの森の生態系の変化を監視し、カリフォルニア州魚類野生生物局、モントレーベイ水族館、海洋哺乳類センターなどと協力してラッコの漂着ネットワークを実施している。これらの取り組みは、ラッコの個体数を効果的に管理するための情報を提供し、支援するものであり、ラッコの回復に向けた指針となる。

調査方法

  • 年次個体数指数は、カリフォルニア州魚類野生生物局原油流出防止対応局、モントレーベイ水族館、米国地質調査所、米国魚類野生生物庁の研究者、学生、ボランティアが、陸からの望遠鏡による目視、カリフォルニア海岸沿いの低空飛行の航空機による目視から算出される。
  • 今年調査が行われた海岸線は、サンマテオ郡のピジョンポイントからサンタバーバラ港まで拡大し、サンニコラス島も含む。

ラッコに関して

  • ラッコは毛皮交易時代後、カリフォルニアでは絶滅したと考えられていた。カリフォルニア州が1913年にラッコに「完全保護」の地位を与えたとき、ポイントサー近辺に小さなラッコの群れあることが地元の人々や州の職員に知られていたが、1930年後半にビッグサーの北にあるビクスビークリーク近くで150頭ほどまでのラッコが記録され、一般市民によって「再発見」された。
  • ラッコは、岩の多い潮間帯の生態系におけるキーストーン種と考えられている。ラッコはウニを餌としているが、ウニを放置しておくと、ケルプ床を食べ屈し、ケルプの森に依存している多くの種の生息場所やシステムが失われてしまう。
  • ラッコは、太平洋の沿岸生態系の生物多様性の維持に役立っており、多様な野生生物を支え、沿岸コミュニティに経済的支援を提供している。
  • 多様な野生生物種を支え、沿岸コミュニティに経済的支援を提供する太平洋沿岸生態系。
  • ラッコは海岸近くで餌を食べて生活しており、汚染物質や海岸から流出した病原体に最初にさらされる捕食者であることが多いため、科学者はラッコから沿岸の生態系の状態に関する手がかりを得ることができる。
  • カリフォルニアラッコは、連邦の絶滅に瀕する種の保存に関する法で絶滅危惧種(threatened)に指定されているほか、海洋哺乳類へのハラスメント、狩猟、捕獲、殺害を禁止する海洋哺乳類保護法でも保護されている。ラッコの行動を変えてしまうほど接近することは、これらの法律に違反する可能性があり、重要な貯蓄したエネルギーを失わせてしまう反応を引き起こすことにりストレスを加えることになる。
  • 市民が座礁したラッコを目撃した場合への通報先はこちらのページに掲載されている。
図1:カリフォルニアラッコのカリフォルニア本土中央沿岸部およびサンニコラス島における分布 2019年
図1:カリフォルニアラッコのカリフォルニア本土中央沿岸部およびサンニコラス島における分布 2019年
図2:生データの3年平均値に基づくカリフォルニアにおけるカリフォルニアラッコ(Enhydra lutris nereis)の豊度傾向。データは本土生息域(左軸)、サンニコラス島(右軸)及び2012年以降の全生息域における全個体数(実線)およびそのうちの成獣(幼獣ではないもの、破線)を示す。2012年以降個体数の合計が正式な個体数指数となった。
図2:生データの3年平均値に基づくカリフォルニアにおけるカリフォルニアラッコ(Enhydra lutris nereis)の豊度傾向。データは本土生息域(左軸)、サンニコラス島(右軸)及び2012年以降の全生息域における全個体数(実線)およびそのうちの成獣(幼獣ではないもの、破線)を示す。2012年以降個体数の合計が正式な個体数指数となった。
図3:カリフォルニア本土沿岸、カリフォルニア中央沿岸部およびサンニコラス島、南カリフォルニアにおけるカリフォルニアラッコ(Enhydra lutris nereis)の豊度の地域的傾向。生データ及び3年平均値(時間軸全体に現れている実線)が本土の北部(青)、中央部(濃いオレンジ)、南部(緑)及びサンニコラス島(茶)に分けてプロットされている。最新の5年平均値(変化の年率の幾何平均として計算)がそれぞれの時間軸の最後に実線で示されている。
図3:カリフォルニア本土沿岸、カリフォルニア中央沿岸部およびサンニコラス島、南カリフォルニアにおけるカリフォルニアラッコ(Enhydra lutris nereis)の豊度の地域的傾向。生データ及び3年平均値(時間軸全体に現れている実線)が本土の北部(青)、中央部(濃いオレンジ)、南部(緑)及びサンニコラス島(茶)に分けてプロットされている。最新の5年平均値(変化の年率の幾何平均として計算)がそれぞれの時間軸の最後に実線で示されている。
図4:カリフォルニア本土中央沿岸部におけるカリフォルニアラッコ(Enhydra lutris nereis)の地域ごとの個体密度のバリエーション(沿岸500メートルあたりのラッコの数)。サンニコラス島の空間的に明白な分析が現在おこなわれていないため、サンニコラス島のデータは示されていない。
図4:カリフォルニア本土中央沿岸部におけるカリフォルニアラッコ(Enhydra lutris nereis)の地域ごとの個体密度のバリエーション(沿岸500メートルあたりのラッコの数)。サンニコラス島の空間的に明白な分析が現在おこなわれていないため、サンニコラス島のデータは示されていない。
図5:カリフォルニア本土及び中央沿岸部沿いのカリフォルニアラッコラッコ(Enhydra lutris nereis)の地域的な豊度傾向。傾向は、海岸の各地点で最新の5年時系列に対数線形モデルを当てはめ推定された平均指数関数変化率log(λ)を計算し、10キロ移動平均を用いて空間的に平滑化したもの。
図5:カリフォルニア本土及び中央沿岸部沿いのカリフォルニアラッコラッコ(Enhydra lutris nereis)の地域的な豊度傾向。傾向は、海岸の各地点で最新の5年時系列に対数線形モデルを当てはめ推定された平均指数関数変化率log(λ)を計算し、10キロ移動平均を用いて空間的に平滑化したもの。
図6:カリフォルニアラッコ(Enhydra lutris nereis)のカリフォルニア本土沿岸及びカリフォルニア市中央部沿岸の生息域北端および南端("As The Otter Swims"[ATOS]スケールで定義されているもの)の時間経過によるバリエーション。1983年~2019年。ATOS値の増加もしくは減少は、生息域の拡大もしくは縮小を意味している。
図6:カリフォルニアラッコ(Enhydra lutris nereis)のカリフォルニア本土沿岸及びカリフォルニア市中央部沿岸の生息域北端および南端("As The Otter Swims"[ATOS]スケールで定義されているもの)の時間経過によるバリエーション。1983年~2019年。ATOS値の増加もしくは減少は、生息域の拡大もしくは縮小を意味している。

U.S. Fish and Wildlife News Release
Slight dip in California sea otter numbers, according to 2019 survey results
September 24,2019