ラッコ百科 - 特徴| Physical Characteristics

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ラッコの体


出生時は10本、成獣には32本の歯があります。
臼歯(奥の丸い歯)は貝やカニの殻をかみ砕くのに適しています。
貝やカニの殻などにこびりついた身をとるのに、門歯で身をこそげとります。

骨格
ラッコには鎖骨がありません。

 

下はラッコの頭蓋骨の3Dビューです。

カーソルで動かすことができます。

カリフォルニアラッコの頭蓋骨(オス)

カリフォルニアラッコの頭蓋骨(メス)


ラッコの聴覚は特に鋭くも弱くもないようです。
眠っていても、物音で起きることもありますし、鳥の鳴き声に驚いて逃げることもあります。給餌の際にはとくに聴覚を必要とはしないのでしょうが、危険を察知する程度の聞き分けはできるのかもしれません。

右の写真のラッコは同じラッコが水の中にいるときと陸にいるときのものです。
水に入っている時は、耳を閉じることができます。(右上)

ヒゲ
ラッコは海底にいる無脊椎動物を餌にしていますが、暗い海底で餌を探すのに、ヒゲは非常に重要な役割を果たしています。

成獣の頭の毛。白い毛と茶色の毛が混ざっている。
成獣の頭の毛。白い毛と茶色の毛が混ざっている。

体毛

ラッコは1平方インチあたり約100万本、身体全体で8億本もの毛が生えています。ラッコの毛は地球上の動物の中でもっとも密度が高いのです。
毛はガードヘアと呼ばれる長い毛の下にアンダーヘアという細かい毛が生えています。ガードヘア1本あたり、部位により異なりますが12本から108本のアンダーヘアの束が生えています。この毛の間に空気の層を作ることで、直接水が皮膚に触れることがなく、寒冷な海で生きていけるのです。
ラッコは生まれた時にはラヌーゴと呼ばれる明るい茶色の幼毛に包まれています。幼毛は水に浮きやすく、溺れないようになっています。生後13週くらいまでに幼毛が生え変わり、潜ることができるようになります。

ラッコには頭から胸にかけてが白くなるものもいます。白くなり始めるタイミングは個体により異なりますが、年齢と共に白っぽくなっていくようです。


ラッコの前脚は短く、外から見ると肘から下しかないように見えますが、上腕部分は毛皮に隠れています。だぶだぶのTシャツを着ているような感じです。
ラッコの手はミトンのような形状です。手のひらには細かい凹凸があり、滑りやすい餌や石などをしっかり捕まえられるようになっています。
手は非常に器用です。霊長類以外で道具を使う、数少ない動物の一つです。
石以外にも、瓶などいろいろなものを拾って道具に使おうとすることがあります。こちらは野生のラッコが道具をつかってアワビを取ったり貝を開けたりする動画です。

それぞれの指には出し入れ可能な爪があります。

指の骨格は独立していますが、それぞれ自由に動かすことは難しそうです。

後脚

ラッコの後ろ足はひれ状になっており、指の間には水かきがあります。広げると扇子のような形になります。
身体をくねらせながら後ろ足を力づよく動かして、時速5マイル(8km)程度のはやさで泳ぐことができます。しかし、一方陸で歩くには不便になってしまいました。
足の指にはそれぞれ肉球のようなものがあります。

ラッコの足跡。丸く見えるのは前足。ひれ状のものは後ろ足。人間と逆で、外側の指が長い。足の真ん中あたりに点々と見えるのは指の関節。ひれは途中で曲げることができます。

ポケット
ラッコは脇の下の皮膚がたるんでおり、そこに餌や小石などを入れておくことができます。ポケットといっても袋状になっているわけではないので、回転する時には手でポケットの部分を抑えて落ちないようにしています。
写真の○で囲んだ部分がポケットです。白い小石とムラサキガイを入れているのが分かります。

海に適応

ラッコの身体的な特徴をわかりやすく説明したNOAAの動画に字幕をつけてみました。右下のCCをクリックして日本語を選択してください。

ラッコは他の海洋性哺乳類と比較しても、海に進出したのはかなり遅い時期でしたが(ラッコの歴史参照)、産まれてから死ぬまでの一生を陸に依存することなく過ごせるという意味ではかなり海に適応した動物と言えます。

身体的には次のような海に適応した特徴があります。

 

1.水に潜る際、鼻と耳を閉じることができる

水辺で生活する動物や、海に住む哺乳類はこの機能を持っているものが多くいます。


2.肺活量が大きい

ラッコの肺活量は同程度の大きさの哺乳類の2.5倍程度あり、最長5分くらいまで潜っていることができます。


3.前足はものを掴むため、後ろ足は泳ぐため

アザラシやアシカも足がヒレのようになっていますが、ラッコの前足はヒレ状ではありません。
これはアザラシやアシカが泳いでいる魚を獲るため速く泳げるように進化したのに対し、ラッコの前足はウニやカニ、貝など様々な形状をしたものを掴んで取るのに適した形になっているのです。ラッコは霊長類以外で道具を使う数少ない動物の一種です。

4.尻尾が筋肉質

仰向けの状態で早く移動するときは体を前に折って伸ばすような動作で進みますが、ゆっくり動くときや水の流れに沿って泳ぐときには尻尾を左右に動かして自分の行きたい方向へ進みます。

 

5.筋肉が発達

ラッコは体の筋肉が発達しています。潜水しながら岩に張り付いた貝などを剥がしたり、また腹の上に載せた石に貝をぶつけて割るために、かなりの力が必要です。


6.真水を飲まずに生きることができる

ラッコは必要な水分を全て食べ物から取ることができます。食べ物から取り過ぎる不要な塩分を排出するため、大きな腎臓を持っています。

寒さに耐える

ラッコは北大西洋を中心に繁殖したため、厳しい寒さにも適応しなければなりませんでした。

しかし、他の海洋性哺乳類とは異なり、脂肪層を持たないラッコは別の方法で身体を守らなければなりませんでした。

寒さに適応した特徴として、以下が挙げられます。

 

1.代謝が高い

食べたものをすぐエネルギーに変え、体温を維持するために利用します。
そのため、一日に体重の20%~25%を食べなければならないと言われています。

ラッコが餌を食べている様子を見ていると、潜っては食べ、潜っては食べをひたすら繰り返しています。潜るだけでもかなりの体力を使うのでしょうから、本当に大変です。


2.密度の高い体毛

ラッコには、1平方センチメートルあたり、2.6万~16.5万本の毛が生えており、動物の中で最も密な体毛を持っています(人間の頭の毛が約10万本)。最も体毛密度が高いのは前足、身体の側面、お尻で、密度が低いのは胸、脚、足ひれです。ラッコの体毛は2層になっており、外毛と下毛があります。1本の外毛に対し場所により8本から108本の下毛が生えています。場所により長さが異なり、外毛は8.2~26.9mm、下毛は4.6~15.8mm程度です。一番毛が長いのは背中と腹部、側面です。外毛は防水効果があり、そのおかげで下毛も皮膚も濡れることがありません。密な下毛が空気を含み、体温を守ります。

グルーミング(毛づくろい)

ラッコにとってグルーミング(毛づくろい)は非常に大切な習慣で、体温を奪われないために常に毛皮の手入れをします。1日に数時間は毛づくろいに当てます。

2層になっている毛皮の下毛は常に乾いており、ここに空気を貯め込むことで、保温効果を維持しています。前足の爪を櫛のように使い、手入れをします。空気を吹き込んでいる様子を見ることもできます。また、水面でくるくる回りながら毛の中に空気を入れます。毛が汚れるとこの保温効果が弱くなってしまうため、時間をかけて丁寧に毛づくろいをします。

食べた後には、身体についた食べかすを落とすため胸や腹の辺りをごそごそしたり、くるくる回ったりします。

ラッコは非常に身体が柔軟なので、身体のすみずみまでお手入れすることができます。

産まれたばかりの頃はこうした毛づくろいができないので、母親が子どもの毛をお手入れしてあげます。