【記事】ラッコ啓蒙週間が必要な理由 | Why Do We Need Sea Otter Awareness Week?

本日は2016年9月12日付のShedd Aquarium Blogから、"Why Do We Need Sea Otter Awareness Week?"をお届けします。
もうすぐラッコ啓蒙週間ですね。日本においても、ラッコをただ可愛らしい動物として紹介するだけにとどまらず、生態系におけるラッコの重要性を知る機会が増え、野生のラッコの研究や保護に力を入れて欲しい。そのために、らっこちゃんねるは今後もさまざまな情報や記事をお届けしていきたいと思います。

Photo Shedd Aquarium
Photo Shedd Aquarium

皆さん、ラッコのことはご存じですよね?ラッコが好きですよね。ラッコの手つなぎ動画や、母親ラッコが赤ちゃんをお腹に乗せてグルーミングする動画はネット上を席巻しました。シェッド水族館にいる保護されたラッコ、ルナ(写真上)は最初の年、世界で最もキュートな動物のリスト2つの中に選ばれ(当然ですが)、ザ・ニューヨーカー誌でも特集されました。

 

控えめな動物などいません。

 

それなら、研究者らがラッコのことを知っているのであれば、なぜシェッドを含む多くの水族館や動物園、自然史博物館、保全団体、研究者、教育者や愛情をもった一般市民らは毎年、Enhydra lutrisつまりラッコに特化した1週間のイベントやアクティビティに力を注ぐのでしょうか。

 

カリフォルニアラッコは厳しい問題に直面しており、一方全てのラッコは大参事となる原油流出の危険に脅かされているからです。さらに、この最小の海洋哺乳類であるラッコが健康であればまた、地球上で最も生産的な海洋生態系も健全になるからなのです。

 

ラッコは、ここ近年10頭ほど確認されている日本から、約15,000頭が生息するロシア東部沿岸、65,000~78,000頭のアラスカラッコが生息するアラスカ州・カナダ沿岸・ワシントン州、そしてカリフォルニアラッコが3,000頭強生息するカリフォルニア州中央沿岸部にかけてが生息域です。歴史的には、ラッコはメキシコのバハ・カリフォルニアの中央部まで生息していました。

Photo Shedd Aquarium
Photo Shedd Aquarium

ルナと、一番新入りの保護されたラッコ、エリー(写真上)はカリフォルニアラッコです。ラッコは全て19世紀終わりから20世紀始めにかけて毛皮猟で殲滅され、1911年の膃肭獣保護条約(おっとせいほごじょうやく)によって保護されました。アメリカにおいては1972年に海洋哺乳類保護法により更なる保護を得ることができました。1989年にアラスカで起きた大災害エクソン・バルディーズ号原油流出事件で影響を受けたものも含め、生息域の多くの個体群はゆっくりと回復してきていますが、カリフォルニアのラッコは例外的に回復が遅くなっています。

 

今日のカリフォルニアラッコは1938年にビッグ・サー付近で発見された約50頭からなる唯一の個体群の子孫たちです。1977年の絶滅に瀕する種の保存に関する法律、そしてカリフォルニア州の野生生物に関する法で更に保護が強まりましたが、カリフォルニアラッコは生きるためにずっと苦労しており、連邦の絶滅危惧種に指定されています。アメリカ地質研究所による春の個体群調査では、2015年に3,054頭、2014年に2,944頭、2013年に2,939頭でした。比較すると、他の地域の回復中のラッコは年20%ほどで増加しています。

人間由来の問題

カリフォルニアラッコは、繁殖するのと同じ速さで死んでいるのです。特に繁殖期の成獣で死亡率が高くなっています。原因は様々ですが、特に目立つ脅威は人間が引き起こしているものです。

病気

人間や動物のふんに含まれる感染症は豪雨流出水や排水、下水システムからの漏水、農業排水などから海へ流れ込みます。蓄積されたバクテリアや寄生虫などはラッコだけでなく、他の海洋哺乳類をも死に至らしめます。(シカゴ川が泳げない理由と似た問題です)

毒素

何十年も前に使用されたDDT(殺虫剤)やPCBs(ポリ塩化ビフェニル:広い分野で使用された毒性の高い物質)を含め、土壌に蓄積された数十種の毒性の高い化学物質が豪雨流出水や雪解けで海へ流れ込みます。こうした汚染物質はハマグリやムラサキガイのようなろ過食生物に取り込まれ、そうした貝類が大好物であるラッコが割って食べることになります。そのような毒素は神経や生殖機能、免疫システムにダメージを与え、ラッコを病気にかかりやすくし、捕食者に対し脆弱になります。肥料や窒素やリンのような栄養素のような陸由来の化学物質が増えると、藻類や珪藻植物が大繁殖し、毒素を生産することがあります。ラッコや他の海洋哺乳類はこうした生体毒素を食べ物と一緒に飲み込むことで死んでいるのです。

原油

ラッコは油とは交わりません。しかし、ラッコは沖にある油田掘削施設や沿岸を行き来するタンカーからの原油流出の脅威と共に暮らしています。原油はラッコの体毛に浸み込み、体温を保持するために断熱の役割を果たしている空気を押し出してしまいます。低体温症に屈することはなくても、体毛をきれいにしようと油を舐めて多量に飲み込んでしまった結果、臓器へのダメージにより死んでしまうこともあります。

捕食者

捕食の関係すら、人間によって歪められることがあります。研究者らは、感染症や生体毒素が神経にダメージを与え、ラッコが捕食者を感知したり逃げたりする能力を低下させた結果、サメの噛みつきによるラッコの死亡が増加したのではないかと考えています。サメによる捕食の頻度が高まりは、明らかにカリフォルニアラッコの回復を遅らせている要因の一つとなっています。

 

生態系におけるドミノ効果の例として、アラスカ南西部ではシャチがラッコを捕食するようになっています。通常捕食の対象となるトドを十分に見つけることができないからです。商業漁業により主なエサとなる種が乱獲されてしまったため、トドは危険な数値まで減少しており、絶滅に瀕する種の保存に関する法律で絶滅危惧種に指定されています。影響をうけたラッコの個体数は急減した後変わらず、その地域の生態系に壊滅的な影響を与えています。

Photo Shedd Aquarium
Photo Shedd Aquarium

顔がかわいいだけではない

ラッコはキーストーン種と呼ばれています。アーチが崩れないような役割を果たしている中央の石のように、この小さな海洋哺乳類は広大なケルプの森を含む沿岸域の生態系のバランスを取るというその大きさに見合わないほどの役割を果たしているのです。

 

 ラッコは毎日体重の25%もの海産物を消費しますが、柔らかくジューシーな身をもつウニを特に好みます。ウニはケルプを食べるので、コントロールされなければこの海面下の森を丸裸にしてしまいます。ラッコが太平洋沿岸から姿を消していた時、多くのケルプの森が消失していました。

 

ラッコの他にも、ヒトデや巻貝からハゲワシ、コククジラ、そしてスポーツフィッシュングや商業漁業にも重要なケルプバス(スズキの仲間)やロックフィッシュ(メバルの仲間)に至るまで、多岐にわたる生物がこのケルプの森に依存しています。この巨大な海藻は頑丈に連なり、海の強い海流を穏やかにし、高潮や崩落から海岸を守っているのです。

 

また光合成を行う生物として、ケルプは二酸化炭素を吸収し酸素を排出します。カリフォルニア大学サンタクルーズ校の研究者らがウニをたくさん食べるラッコが生息するケルプ床が8.7メガトンの炭素を吸着していると産出しました。これは、600万台の乗用車が排出する二酸化炭素に匹敵し、ラッコのいないケルプの森が蓄える二酸化炭素の量はそれより2メガトン少ないのです。ラッコは気候変動と闘っているとも言えるでしょう。

Photo Shedd Aquarium
Photo Shedd Aquarium

ラッコを愛するだけでなく

シェッド水族館は海洋生物の保護とリハビリに関しては長い歴史があります。しかし1989年、偶然ラッコの保護とリハビリに関わるようになりました。歴史的な事故ーエクソン・バルディーズのタンカーが座礁・破損し1,100万ガロンもの原油がアラスカの絵のように美しいプリンスウィリアム湾に拡散し、何万もの海洋哺乳類、鳥、魚、無脊椎動物を死に至らしめたのです。

 

ラッコは特に空気を必要とするため水面にいたため、濃い油が付着し大きな打撃を受けました。シェッド水族館の専門家も、災害現場の近くに作られたラッコ保護センターでの24時間体制での作業に加わりました。アボット・オーシャナリウム水族館が開館した際の最初のラッコは、その原油流出事故で親を失ったり親に捨てられた理したラッコの子どもたちでした。シェッド水族館はアメリカ魚類野生生物局と協働し緊急を要するラッコの子どものリハビリを続けており、現在、当館にいる5頭のラッコのうち4頭は保護されたラッコです。(5頭目のラッコはアメリカ動物園水族館協会に認可を受けた別の施設からきた、エクソン・バルディーズ号事件で保護されたラッコの子どもです)

 

ラッコたちは代わりに、原油に晒された長期的な影響に関する重要な研究に貢献し、アラスカラッコに関する知識を広げ、歯科から高齢のケアに至るまでの先進獣医学の専門性を高める機会を私たちに与えてくれます。

 

シェッド水族館は、誇りを持って今年14回目となるラッコ啓蒙週間に参加しています。このイベントは当館の5頭のラッコたちの物語や、野生のラッコたちが直面する困難を変えていく保全努力に光を当てる機会なのです。

 

みんなラッコが大好きです。でも、たとえ太平洋から遠く離れたところに住んでいても、例えば、持続可能な魚介類を選ぶこと、石油の消費を減らすこと、シェッド水族館の保護リハビリプログラムを支援することなどにより、ラッコのために行動を起こすことができます。ラッコにとって、そして他の海洋生物にとって海が安全な場所になるまで、私たちにはラッコ啓蒙週間が必要なのです。

 

ウェブエディター カレン・ファーンウェーガー

Shedd Aquarium

Why Do We Need Sea Otter Awareness Week?

SEPTEMBER 12, 2016 Karen Furnweger