【記事】海、私たちの裏庭:遅々としたラッコの復活 | Our Ocean Backyard: A slow sea otter comeback

久しぶりの更新になります。

本日は2016年10月15日付のSanta Cruz Sentinel Environmentから、"Our Ocean Backyard: A slow sea otter comeback"をお届けします。2016年のカリフォルニアラッコ個体数調査では大幅な個体数の増加が報告されていますが、これはラッコを取り巻く問題が解決しているからというわけではありません。

母親ラッコが子どもにエサを与えている。エルクホーン湿地帯にて。Kim Steinhardt
母親ラッコが子どもにエサを与えている。エルクホーン湿地帯にて。Kim Steinhardt

私は少なくとも週に数回、カヤックで海に出るようにしている。いつもはウエストクリフ沿いか、スティーマー・レーンとハーバーの間だ。

 

時々小さなイルカの群れや数頭のクジラを見かけることがある。またワーフの下で吠える多くのアシカに加えて、たいていいつも見るのが数頭のラッコたちだ。

 

先週の土曜と日曜の両日、私はライトハウス・ポイント(灯台岬)の400ヤード(約36m)ほど東で、20頭ほどの大きな群れ(ラッコ)がケルプに身を包んで一緒にいるのを見かけた。

 

私は度々自分で沖へカヤックを漕いでいったり、ウエストクリフ沿いに歩いたりしているが、一度に数頭以上が一緒にいるのを見たことがなかった。

 

1980年代半ばから毎年、アメリカ地質調査所とアメリカ魚類野生生物局が個体数調査を行い、絶滅に瀕する種の保存に関する法律のもとで絶滅危惧種に指定されているラッコの状態を確かめている。

 

カリフォルニアラッコは1700年代から1800年代の毛皮貿易の間に完全に一掃されてしまったと考えられていた。しかしビッグ・サーの高速道路が開通してから1年後の1938年、ビクスビー・クリークの近くで50頭ほどの群れが発見された。そしてそのラッコはそれ以来、非常にゆっくりと数を増やしてきている。

 

1980年代半ばの最初期の公的な個体数調査ではその数は1,300頭ほどまで拡大している。ラッコはカムバックを果たしつつあったのだ。その後30年で、全体的な個体数は増加しているものの、その軌道は一定ではなく、数が増える年が数年続き、その後減少が続いたりしていた。

 

今年、2014年(訳者注:2015年の誤りだと思われます)の3,054頭から増加しその数は3,272頭という勇気づけられるサインを示した。30年前に個体数調査が始まって以来、初めてラッコの数が3,090頭を超えたのはこれが初めてのことだ。

 

これは、アメリカ魚類野生生物強がラッコを絶滅危惧種のリストから外すかどうか考慮するために3年連続で越えなければならない基準線なのだ。

 

一つ問題なのは、3,090頭のラッコをどのようにして数えるかということではないだろうか。まず初めに、ラッコを見るためには天候がよくなければならない。調査は陸上から望遠鏡を使って行われるものと、視界のよい日に低空飛行の飛行機から見るものを組み合わせて行われる。

 

今年の調査はサンタバーバラ郡の南端にあるリンコン岬から、ハーフムーン湾のピラー岬にかけて行われているが、1980年代に野生生物学者らによりつくられたサンニコラス島で成長中の個体群も含まれる。

 

今年個体数が多く見られた要因はいくつかある。重要なことに視界が良好だったため、ラッコをより容易に確認することができたのだ。

 

ラッコは沖の冷たい海で体温を保持するために多くのエサを摂取しなければならないため、ラッコの個体数は少なくとも部分的には入手可能なエサによって制限される。昨年、ブリティッシュコロンビアからバハカリフォルニアに至る範囲でヒトデの大量死(ヒトデの病気による)が起こった。

 

ヒトデの好むエサの一つがウニだが、偶然にもラッコの好むエサでもある。ヒトデが激減し、ラッコはウニを独り占め状態だったため、より多くの幼獣が成獣になることができたと考えられている。

 

ラッコにはまだ多くの脅威があるが、生息域を北や南へと拡大することについては限定的にしか成功していない。生息域中央部では個体数は増加しているものの、生息域周辺には当てはまらない。生息域北端や南端ではラッコの死体が多く回収されており、その多くにサメによる致命傷がみられた。

 

ラッコは変化しつつある海洋状態とともにある複雑な生態系の一部だ。海洋状態の変化は食料資源にも影響を及ぼす。またそれにサメの噛みつきや毒素、寄生虫、人間による干渉などの脅威も加わっている。

 

50パウンドから70パウンドほど(約22.5~31.5kg)のラッコは、生きるために日々15パウンドから20パウンドほど(約6.8~9kg)のエサを食べなければならない。親子であれば、状況はさらに難しい。生きるためだけに、毎日裏庭で何か食べるものを35パウンドから50パウンド(15.8~22.5kg)探さなければならない状況を想像してみてほしい。

 

 

ゲイリー・グリッグスはカリフォルニア大学サンタクルーズ校海洋科学研究所・ロングマリン研究所のディレクターである。

連絡先はgriggs(at)ucsc.edu、過去の「海、私たちの裏庭」の記事はこちらから
http://seymourcenter.ucsc.edu/about-us/news/our-ocean-backyard-archive

Santa Cruz Sentinel Environment

Our Ocean Backyard: A slow sea otter comeback

Gary Griggs POSTED: 10/15/16