【記事】ラッコの苦しい戦い - ラッコと人間と環境(2) |Threatened: The Controversial Struggle of the Southern Sea Otter - Part.2

ラッコが直面する問題を捉えたPalomar Universityの動画の書き起こしパート2。「ラッコ除外区域」の失敗が明らかになり、利害が相反する人々の間に軋轢が生じます。そのまっただ中で、ラッコたちはまた別の問題に直面していきます。

今回も誤訳御免でお願いします。

動画は前回の続き部分(11:25)あたりに設定されています。

前回の書き起こしについてはこちらをご覧ください。

計画の失敗

漁業関係者

「海産物産業とラッコは同じ場所では共存できるわけがない。

我々は海産物を収穫しているが、持続可能なようにやっている。ラッコは、持続可能に獲るなんてことは知らない。無くなるまで食って食って食いつくすだけだ。」

 

漁業関係者

「海産物産業界はラッコがいると自分たちの産業が維持できなくなると考えています。たとえば、ウニ業界などがそうです。

私たちは、ラッコが競争の結果、漁業関係者を負かすかもしれないと思っています。そのため、漁業関係者は商売を続けたければ、もっと南へ行くか、もしくはラッコがいない他の海域へ行くしかなくなるでしょう。」

 

魚類野生生物局に何も動きがないまま10年が過ぎ、ラッコの移殖プログラムとラッコ不在区域についての正式な見解を求めて2つの環境団体が2009年に当局に対し訴訟を起こしました。

 

環境保護センター スタッフ代理人 ブライアン・シギー氏

「当局はこの不適当なプログラムの中止に直面していましたが、もう20年もの間破綻していることが分かりきっているプログラムの中止を宣言することに反対する政治的な意見がありました。私たちが訴訟に至ったのは、そういう反対意見に対し外部からの圧力が必要なことは明らかだったからです。

当局は訴訟を却下させようとしましたが、それは退けられ、その裁判の際判事が判決時このように述べました。『当局は明らかに法的な責務を負っており、この件に関しては本来1987年の法において、プログラムの成功の有無にかかわらず結論を出すという公約をしているが、その公約を守っていない。』

 

18か月間にわたり検証と証言をまとめた結果、2012年12月、魚類野生生物局はついにラッコの移殖プログラムは失敗であったことを認め、ラッコの不在区域を廃止すると発表しました。

ラッコは、南カリフォルニアの海域に移すことだけが許されています。漁業関係者の多くは、この結論に怒りをあらわにしています。カリフォルニア中央沿岸部のラッコ生息地を良くすることだけが強調されているからです。

 

漁業関係者

「だったらなぜ失敗だったとは言っても、その区域の設定が間違っていたとは言わないんだ?それがそもそも間違ってる。もし、何か間違っていると指摘するなら、すでに問題がある区域、つまり、ラッコが死んだり汚染があったりする区域にプログラムがあるというこ自体が問題なんじゃないか?ちゃんと問題を捉えてくれよ。この区域がどう、あの区域がどう、この移殖プログラムがどうなんて話はやめて、問題の本質を押さえてくれ。関係者を集めて、このバカバカしい問題をさっさと解決してくれ。業業関係者が問題なんだっていう人たちに耳を傾けるのはもうウンザリなんだ。」

 

漁業関係者

「もしサンディエゴにラッコたちが来るようなことになったら、商売はあがったりになりますよ。ダイバーたちが収穫するウニがなくなってしまいますからね。ラッコが全部獲りつくすでしょうから。ここで働いている従業員たちもみんな、仕事がなくなってしまうでしょう。私は、自分のことはどうでもいいですが、この仕事で食っている会社や、寿司屋や、そこで働いている従業員たちはやっていけないんです。」

経済的な対立

多くの研究者と漁業関係者は、ラッコの生息範囲を南カリフォルニアの水域に広げることで、ウニ漁業界にマイナスの影響を与えるということについては同意しています。

しかし、こうした経済的な影響は、その地域の観光業を活発化させることで小さくできる可能性もあります。

ラッコによる経済への影響
ラッコによる経済への影響

 

「ジョン・ルーミス博士がディフェンダーズ・オブ・ワイルドライフ(アメリカの野生動物保護活動をするNPO)を通じて、経済的なメリットについての研究をおこないました。その研究によると、この地域にラッコが戻ってくることにより、サンタバーバラやヴェンチューラ地域に、多くの利益をもたらすだろうということがわかりました。その利益は、漁業産業のごく一部に過ぎない影響をはるかにしのぐものです。

環境団体は、漁業関係者とのラッコ不在区域についての議論には、初期から関わっていました。将来的には、なんらかの形で漁業業界の助けになるようにかかわっていけるようになると思っていあす。ラッコのことだけを考えているわけにはいかないからです。生態系全体の健全さを考えなければいけません。

ラッコの数を回復させることは、魚や無脊椎動物の回復を試みることでもあります。だから、他の生き物にも配慮しなければなりません。ラッコは、こうした他の生き物たちの健全さや数の回復に関与しているからです。」

ラッコの果たす役割

研究者たちは、沿岸部の生態系の健全さを維持するという点でラッコが厳しい役割を果たしているということを理解しています。環境活動家が、南カリフォルニアの海にラッコを戻そうという啓蒙活動をしている第一の理由がそれです。

 

パロマ大学教授 レスリー・ウィリアムズ氏

「ラッコは、古くからの中枢種(キーストーン種。生態系において比較的少ない生物量でありながらも、生態系へ大きな影響を与える生物種を指す生態学用語)です。つまり、その動物が存在することで、生物の多様性のリストに上がる名前が増える。その存在により多くの様々な植物や動物やあらゆる生き物が存在できるーそんな生き物を一つ上げるとしたら、それはラッコなのです。」

 

スクリップス海洋研究所 研究員 エド・パーネル氏

「ケルプ(コンブのような海草)は、それ自体が食料や棲家を供給するという、非常に重要な役割をはやします。ケルプは海底からずっと上に、海面に届くまで育ちます。しかも、かなり成長が早い。そういう意味では、非常に生産性が高い植物なのです。コンブを食べる動物は、ウニやアワビの仲間です。それから、小さな餌になるようなもので、ケルプの森の外から来るものもある。そうすれば魚も来る。それはまた、よそでは餌になる。このように、非常に複雑な食物網が存在するのです。」

 

ケルプが豊かな場所には、自分たちを守るケルプの天蓋を生息地とするさまざまな魚や無脊椎動物など、複雑で活気に満ちた生態系が現れます。もしラッコがこの生態系からいなくなれば、ウニはケルプの森を必要以上に食べつくし、この海の生態系を致命的に破壊してしまうのです。

 

パロマ大学生物学教授 レスリー・ウィリアムス氏

「もしラッコを取り除いたり、ラッコがいなくなったりするようなことがあれば、ウニの数が増大することになります。その海域のケルプを食べ、なぎ倒してしまうでしょう。基本的には、私たちが知る限りでは、沿岸は悪い方に変化するでしょう。」

 

スクリップス海洋研究所 研究員 エド・パーネル氏

「ウニ業界に関して本当に興味深いのは、彼らが持つ影響です。ウニ業界は、彼らがウニを取ることがケルプの森にとっていい影響を与えていると主張しています。しかし、それが事実だという科学的な立証責任をしのぐような証拠はひょっとしたらあるのかもしれませんが、私はこれまでのところ何も目にしていません。しかし、彼らは赤ウニしか獲らないということを私は知っています。しかし、ムラサキウニも南カリフォルニアの多くの地域で繁殖し、ケルプを食べつくそうとしているのです。」

 

アメリカ魚類野生生物局 カリフォルニアラッコ回復プログラム コーディネーター

リリアン・カーズウェル氏

「南カリフォルニアで私たちが目にしているのは、ラッコがいないとどうなってしまうかという結果そのものです。不毛の地になっているというわけではありませんが、一方で、生態系の頂上捕食者としての役割があるラッコがもしそこにいたら期待できたようなものには全く似つかない状態であるということです。したがって、カリフォルニアラッコの生息地が南カリフォルニアの方まで広がれば、ウニがコンブの繁殖を制限していた地域までたくさん見られるようになるでしょう。」

 

南カリフォルニアでラッコが再び生息するようになれば、他にも利点があるかもしれません。

最近発刊されたFrontiers in Ecology and Environment誌に掲載された研究によると、ラッコが気象変化の影響を減少させる可能性があるとしています。

 

パロマ大学生物学教授 レスリー・ウィリアムス氏

「ラッコの数が増えれば、コンブも増えます。コンブの成長は早く、大気中から多くの二酸化炭素を取り込みます。このような温室効果ガスを取り除くことによって、地球温暖化の影響を取り除くステップを踏んでいることになります。」

 

パート3へつづく