【記事】ラッコ501号を救え!(4)| Saving Otter 501-part4

ラッコの保護に情熱を傾ける人々とラッコの素晴らしさを描いたドキュメンタリー"Saving Otter 501"の書き起こしパート4です。
モントレー湾水族館の人々がこれほどまでにラッコの保護に懸命になるのには、理由がありました。

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パート4は29:00ごろから39:45ごろまでの書き起こしです。

母親の大きな負担

モントレー湾近くのラッコは、小さな巻貝やアワビからカニ、ユムシまでおよそ60種類の餌を食べます。

獲ってきた餌を食べ終わるや否や、ラッコたちは次の餌を探しに海底へ潜らなければなりません。

ラッコには脂肪層がないため、冷たい水の中で生きていくのに必要な代謝を十分に維持するため、とてつもない量の食糧を必要とするのです。

体温を維持するため、ラッコは体重の25%もの量を必要とするラッコもいます。

したがって、この大きさのラッコなら一日に7.5kgほどの餌を必要とします。普通の大きさの貝なら、400個分相当になります。それだけの量の餌を探すこと自体、不可能なことのように思えます。それを踏まえて、2匹分の餌を獲らなければならないとしたらどうなるか考えてみてください。

(C)PBS
(C)PBS

これはラッコ1037号です。

モントレーベイ水族館は2007年から長期生息調査の一環として、このラッコを観察しています。

このラッコは、そろそろ子どもを自立させようとしていますが、何か上手くいっていないようです。1037号のあばら骨がみえます。自分がとった餌も、そのまま子どもにとられてしまいます。

約6メートルほど離れたところに、ここを縄張りとしている雄のラッコがうろうろしています。交尾の相手を探しているのです。この雄のやり方は、とても優しいとはいえません。掴んだり噛みついたりしながら、母と子の間に割って入っていこうとします。雄は交尾の際、暴力的になることがあり、時には雌に重傷を与えます。1037号は怪我をしており、栄養も十分でないので、このストレスに対抗することができません。これはいわゆる、「授乳末期症候群」と呼ばれるものです。これは、雌のラッコが襲撃から逃れたり自分と子供を食べさせるための十分なカロリーを摂取できない場合に起こります。1037号が経験したことも、よく見られるようになってきています。3か月以内には、1037号は恐らく死に至るでしょう。

 

子どもを産める雌が減っていくと、個体数を維持することができなくなります。これが、研究者たちは個々のラッコを追跡し観察し続けている理由の一つです。

 

研究者「ああ、あそこにいたよ。別の若いラッコもいる。君が言ったところに。餌を食べる間、そばにいてもらっているようだね・・」

様々な困難

1985年以降、USGS(アメリカ地質調査所)の野生生物学者たちは、毎年カリフォルニアでラッコの個体数調査を行っています。この付近のラッコを全て数えることは、たやすい調査ではありません。たった一匹のラッコにさえ、ずっと目を光らせているのは難しいのです。

 

女性「一頭発見。」

 

その調査の結果、科学者たちが理解しようと必死になっていた一つの謎が明らかになりました。

ラッコの個体数は10年間で緩やかに増加したあと、頭打ちになってしまいました。むしろ、減少している可能性もあります。しかし、謎を解くヒントが、次第に集まってきました。しかし、501号にはその解決は間に合いそうにありません。

 

トゥーラに養育されて3か月後、501号はとうとう基本的な潜水技術を習得しました。砂の中から貝を掘り出し、それを持って水面へ上がります。しかし、たとえ501号が全ての「ラッコレッスン」で優秀な成績を収めたとしても、自然に戻ったときにはもっと困難なことに直面することになります。予め訓練することができない困難です。

 

ハザン「つい先ほど、サンタクルーズで怪我をした母親ラッコとその子どもがいるという通報を受けましたので、現場へ向かい、状況を確認します。」

 

(子どものラッコの鳴き声)

 

ハザン「あそこですよ!」

メイヤー「えっ」

ハザン「すぐそこ」

メイヤー「よし、わかった」

ハザン「カール、袋を取ってくれる?」

 

ハザン「私たちが到着したとき、母親は明らかに死んでしまっていました。子どもは母親にすがりついて鳴いていました。」

 

(子どものラッコの鳴き声)

 

メイヤー「母親を引き上げよう」

 

(子どものラッコの鳴き声)

 

ハザン「サメにやられたの?」

メイヤー「ひどいね・・・」

 

母親がサメに襲われた場合、水族館が助けても、子どもが生き延びることができる可能性はほぼゼロです。しかしこの子どもは非常に幸運でした。

 

ハザン「この子どもはなんとか保護されました。そしてジョージア水族館の展示用のラッコとなりました。悲劇的な出来事でしたが、その中にもいいことがあったのです。」

 

しかし、サメがラッコを襲う例は増えています。

この15年間で、サメに噛まれたことによる死亡率は、全ての死因のうち8%から30%に増加しました。ゾウアザラシの増加により、多くのサメが海岸近くに狩りに来るようになったのです。

 

しかし、ラッコはその行動に影響を与える寄生虫の感染にも苦しんでいます。それは発作や震えなどを引き起こし、その動きがサメをおびき寄せるのです。

ラッコの新たな敵

モントレー湾の中とその付近の水は驚くほど汚染されています。ラッコに害を及ぼしたり死に至らしめる可能性のある化学物質や病原体が多く含まれているのです。

 

このラッコを見てみましょう。

ラッコがなぜ極微な水に含まれる毒に影響を受けやすいか理解できるでしょう。

ラッコの餌になるものは、ほとんどが二枚貝などの「ろ過食者」です。ろ過食者は身体を通じて、大量の水を摂取し、養分を抽出します。そのため、寄生虫や有毒物質が体の組織に凝縮されていきます。そしてラッコがそれらを食べることになります。

それに対し、ラッコの母親とその子どもができることは何もありません。

 

浜に打ち上げられて160日が経ちました。

501号の訓練は、懸命に続けられています。

夜、訪問客がいなくなったあとの水族館で、スタッフたちは501号に今まで見たことがないものを見せます。深い水です。彼らはトゥーラと501号を4メートルほどの深さのある、ラッコ展示用の水槽へ連れていきました。トゥーラは501号を連れて、初めてより現実に近い深さまで潜る方法を見せました。トゥーラはとても簡単そうにしてみせましたが、簡単ではありません。スタッフたちの心には、恐ろしい事実が浮かんできます---養母に育てられたラッコの5頭に1頭は自然に還してもすぐに死んでしまうのです。

 

このように見込みが低いにも関わらず、モントレーベイ水族館が501号や増え続ける保護されたラッコたちにこれほどまでに時間とエネルギーを費やすのはなぜなのでしょうか。

もしラッコがじゅうぶんに繁殖しないのであれば、どうして繁殖しないという自然の節理に従わないのでしょうか。

 

実は、ラッコは生態系で非常に重要な役割を担っているのです。

ラッコはキーストーン種(中枢種)、つまり、ラッコの個体数が十分でないと、ここケルプ(コンブ)の森の食物網全体に非常に直接的な影響を与えるのです。ケルプの森は、アマゾンの熱帯雨林よりも多種多様な生き物の棲家となっています。そして、すべての生き物はケルプに食べ物と隠れ家を提供してもらえるから生きていられるのです。

 

ラッコは、ウニを食べる数少ない捕食者の一つです。ウニはケルプを食べます。放っておけば、ウニはケルプの森を食べつくし、荒らしまわります。その結果、科学者たちが呼ぶところの「ウニによる不毛地帯」となってしまうのです。まるで海の中の砂漠のようになってしまうのです。

 

501号とその仲間のラッコたちがいなければ、モントレー湾の素晴らしいケルプの森は、そこに住む生き物たちとともに一日にして失われてしまうかもしれないのです。しかし、今のところは、モントレー湾には、ウニの個体数調節するのに十分なラッコが生存しています。

 

パート5(完結)に続く

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